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100軒マラソン File No.58

思い出の浦安で「飲み屋で飲む幸せ」を噛みしめた

「居酒屋 屋久島」

公開日:

新橋のご機嫌な立ち飲み酒場からお届けしました前回に引き続き、このたびは、ちょっと足を延ばして千葉県浦安へ出かけて参りました。

千葉県といっても、東京都江戸川区葛西から川一本隔てたお隣さん。都心へも近いことから東京へ通う人たちにも人気のベッドタウンであり、戦後間もなくまでは東京湾に臨む漁師町でもあった。

思い出の浦安で「飲み屋で飲む幸せ」を噛みしめた

ワタクシゴトながら、東京三鷹に育った頃、ちょうど直通運転が始まったばかりの地下鉄東西線に乗って浦安までハゼ釣りに来たことがある。水門の近くの小さな釣り宿の桟橋から釣り糸を垂れ、昼時を挟んで夕刻まで遊んだ。

父と兄と私と三人で、多いときは100匹くらいのハゼを釣り、クーラーボックスいっぱいに入れて帰って、母がそれをフライにして、一家で食べた。もう、50年も前の話です。

そんな思い出深い浦安に、今回は、サッポロラガービール“赤星”を求めてやってきた。店の名前は「屋久島」。そう、あの屋久杉で有名な世界自然遺産の屋久島ですが、この店の女将さんの出身地であることからついた店名であるそうです。

思い出の浦安で「飲み屋で飲む幸せ」を噛みしめた

■最初の一杯のありがたさ

カウンターの席に座り、さっそくビールを注文する。

オープンから27年を数えるこの店のビールは当初から一貫して赤星。ちなみに焼酎は、女将さんの地元屋久島の、三岳。ずっと変わらず、一切ブレずに、コレという銘柄に決めているという。

4点盛りのお通しの皿の隣に赤星1本。あっという間にできあがった目の前の光景に満足しつつ、すぐさま最初の1杯に口をつける。ああ、この瞬間!1年365日、その日最初のビールの1杯をぐいっとやるこの瞬間、私はいつも、ありがてえなあ、と思う。

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たくさん働いた日も、ちょっとさぼった1日も、その日のケジメの1杯はうまい。もちろん、いい仕事をして、それがうまくいき、今夜はゆっくりしてもいいぞ、という宵の口の1杯は何物にも代えがたい。

取材にうかがったこの日の私は、昼間、なにほどのことをしたわけではない。競馬の予想をしつつ多摩エリアの自宅から1時間半をかけて浦安へ来るという、ただそれだけのことしかしていない。けれど、うまいのだ。この1杯は格別だ。

思い出の浦安で「飲み屋で飲む幸せ」を噛みしめた

コロナ禍で自由奔放に飲みにいけない鬱屈のせいもあるかもしれないし、単に私が渇いているだけかもしれない。いや、初めて来て、座ったばかりだというのに、とても穏やかな気持ちになれる、この店の居心地の良さが、最初のビールをことほか、うまく感じさせるのだ。

同じビールなら家でも飲める。いやしかし、オレは飲み屋で飲みたいのだと、強く主張したくなる瞬間である。

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さあ、こちらの名物つまみをいただこう。メニューを見たとき、まっさきに気になったのが「つきあげ」である。これは、かつて、鹿児島県の阿久根で食べた「つけあげ」のことではないか。「つけあげ」は、いわゆるさつま揚げの本場での呼び方であり、鹿児島市内でも「つけあげ」と言っていた。

さっそく女将さんに伺うと、「つきあげ」はやはり「つけあげ」のことだと言う。ただ、屋久島の「つきあげ」はちょっと違うらしい。ご主人も一緒に説明してくださいます。

「すり身の魚はトビウオとムロアジで、ニラが入っています」

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そう言われても、どんな味わいなのか、食感なのか、にわかに想像がつきかねる。けれど、たいへん楽しみであることは事実です。

赤星をまたぐびりとやりながら待つことしばし。つけあげ、ならぬ、つきあげ、は、やってきた。ふっくらとして、からりと揚がったばかりの、見た目の形や大きさもそれぞれのつきあげが4つ。熱いうちに食べなくてはいけない。

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おろし生姜を少しのせ、それから醤油を少し垂らして、口へ運ぶ。はふはふ、はふはふ。熱いところを楽しむ。以前食べた「つけあげ」と違って甘くない。むしろ、すっきりしている。トビウオとムロアジ、ニラに加えて、すり身の団子の中心部には大葉がはさんであったのだ。

揚げたてならではのブリっとした食感も楽しく、魚の旨み拡がった後、ふわりと香る。これは、うまい。ひと口食べただけで軽い感動に包まれている。さすがは、「屋久島」の名物料理。すばらしい食感と風味を楽しませてくれる。

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■「三岳」のソーダ割りに手を伸ばし

編集Hさんと一緒にビールを追加しながら、次に頼むおつまみは、「とび魚の唐揚げ」なるものである。女将さんは、「アゴンコ」と言った。アゴというのは私もわかる。九州ではトビウオをアゴと呼ぶ。アゴの子供だから、アゴンコ。その、唐揚げである。

私の妻は博多の出だから、我が家では毎年、干して焼いたアゴの出汁で正月の雑煮を祝っているが、小さなアゴを揚げて食べたことはない。これも、なんとも楽しみなのである。

ご主人がカウンターの中の厨房で粉をまぶしたアゴンコを油の鍋にするりと入れるのを眺めながら、ごくりと生唾を飲む。

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そうこうしているうちに、カウンターにはひとり、またひとりとお客さんがやってくる。この日は祝日であったのだけれど、早い時刻から、常連さんたちがやって来て、

「ああ、おれも、サッポロの赤、もらおう」

なんて言いながら、自然と会話に混ぜてくださる。

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アゴンコが来た。なるほど、子供のトビウオだ。開いてあって、羽がピンと張っている。見るからにカリカリに揚がっている。

「頭から食べられますよ」

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ご主人の言葉に従い、アゴンコの頭を口に入れて齧る。パリパリっと音がして、香ばしさが口中に拡がる。ほどよい塩味だ。食べるまえにふったレモンの汁の爽快さもいい。苦みやえぐみは、ない。

こいつはうまいな。子供のトビウオだというのがよくわかる初々しさ。それでいて、身もふっくらしていて、うまみが濃い。酒のつまみとしては出色である。羽のところ、そこだけ別にとって口へ入れると、極薄のせんべいみたいにパリパリと口中で砕けた。

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焼酎をもらおうかな……。

屋久島の「三岳」。私はかれこれ20年ほど前に、鹿児島の天文館の居酒屋で、隣り合わせた地元の人から、これを飲みなさいとすすめられて知った。そのときはお湯割りとロックを試し、のちに、芋焼酎というのは水割りもうまいことを知って、さらにその後、ソーダ割りを覚えた。

私の娘の友人には「三岳」のソーダ割りが好きな人がいて、この1杯を「ミタソー」と呼んで好んでいる。それにならって、私も最近では、気が付くとミタソーを1杯、また1杯とお代わりしていることがある。

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それはさておき、次なるつまみは、「さば節と塩らっきょう」だ。

サバ節といっても、からからに干してあるのではなく、カツオ節でいうところのなまり節というところだろうか。スライスしたサバ節が皿にたっぷり盛られてきたと思ったら、実はその下に、ラッキョウが隠れているのだ。

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これは、酢ラッキョウでなく、塩ラッキョウだ。サバの風味と塩の効いたラッキョウの組み合わせは絶妙で、さらに鹿児島の甘い醤油を少しつけてほうばれば、口の中でなんとも幸福な味と噛み応えの競演を楽しませてくれる。

さて、このあたりで肉もいってみようと頼みましたのが、地鶏のたたき。鶏は宮崎の地鶏ということです。

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これがまた、うまいことうまいこと。癖のない芋焼酎のソーダ割りにはぴったりで、本日の、酒とつまみの相性の良さには、ただただ嬉しくなるばかりなのです。

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ここで再び、周囲に目を向けてみますと、気が付けばカウンターは満席、テーブルにも二組のお客さんがついていた。

それとなく話を伺えば、庭でとれる果物や野菜の話、近所の酒場の話、都心とこことのちょうど中間にあたる深川あたりの飲み屋の話、話題はさまざまですが、どれも興味深いものばかり。この日の夕方には、中央・地方合同の競馬の交流G1レースが4レースあったのだけれど、そのこともすっかり忘れて、常連さんの会話にすこしばかり口を挟ませてもらったりした。

思い出の浦安で「飲み屋で飲む幸せ」を噛みしめた

いい飲み屋さんだなあ。こういう店、我が家から歩いてすぐという場所にはないなあ……。これは、赤星の飲める店を訪ねるマラソンを続けていると、時折思うことです。だから、こんな粋狂も、楽しいと感じるのでしょう。

■締めまで見据えて腰を据えたくなる

ここで、女将さんが、サービスのご飯を出してくれた。ムカゴご飯ですよ。ほんのちょっと合いの手みたいな量ですが、嬉しいですね。たいへんうまい。

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そして、このやさしい味わいのご飯を喰い終わる頃になるとまた、少し味の強い、いわゆる酒のつまみがほしくなる。

そこで頼んだのが、にがうり味噌。新鮮なニガウリをざくざくと大きめに切って、豚肉と一緒に、特製の味噌で炒めたものだ。

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口へ入れると、ニガウリは苦すぎず、シャキシャキとして爽快、豚の脂身の甘みによく合って、これまた絶妙なつまみになる。おそらくは、ご飯のおかずにしても最上級のひと皿。

これをつまむのに、もう1回、赤星を頼むのはいかがだろう。強すぎず、ドライ過ぎず、私のような年代の者でも、飲めば懐かしい赤星に、ニガウリと豚肉の炒め物がすばらしい相性を見せるのだ。

思い出の浦安で「飲み屋で飲む幸せ」を噛みしめた

腰を落ち着けたくなってくる。すでに訪れてから2時間を過ぎているから、十分、ゆっくり飲んでいるのだが、この頃になると、締めの1品を何にするか、そんなことまで見据えた上で腰を据えたい気分になってくるのだ。初めての店でも、こういうことは、たまにある。

この時、メニューの中にある、おすすめ印の「屋久島ラーメン」という一品に、私の目は吸い寄せられていた。

思い出の浦安で「飲み屋で飲む幸せ」を噛みしめた

取材・文:大竹 聡
撮影:須貝智行

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