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団長が行く File No.42

赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

「太助」

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あのお店はなぜ時代を超えて愛されるの? お客さんがみんな笑顔で出てくるのはどうして? 赤星探偵団の5代目団長・宇賀なつみさんが、名店の暖簾をくぐり、左党たちを惹きつけてやまない「秘密」を探ります――。 (※撮影時以外はマスクを着用の上、感染症対策を実施しております)

■83歳でバリバリの現役

流行り廃りの激しい東京の飲食業界で、長く店を守り続けるのは大変なこと。若さをエネルギーにえいやっと開業はできたとしても、長く客の愛顧を得るには不断の努力が必要だし、繁盛を保ったとしても、歳をとれば重労働に身体がついていかなくなる。

その点、店主が老境に入ってもなお板場に立ち続ける店には、どこか凛とした空気が漂い、それでいながら安心して身を委ねられる居心地のよさがある。

赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

JR赤羽駅と東京メトロ赤羽岩淵駅の中間にある「太助(だいすけ)」は、そんな稀有な日本料理店。創業は1969年。井上博行さんが30歳で開いた初めての自分の店で、今年でなんと53年目となる。つまり、店主で板長の井上さんは83歳でいまだ現役なのだ。

「太助」が得意とするのがふぐ。この日、宇賀なつみ団長は、シーズン終わりの名残のふぐを楽しもうと駆け込んだ。

赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

井上さんが作業する真ん前の特等席に陣取った団長は、さっそく本日のお品書きとにらめっこ。うんうん悩んでいると、「お刺身切りましょうか。盛り合わせますよ、小盛りで」と井上さん。

そんな助け舟に乗りながら、じゃあ煮物はこれで、ならば焼き物はこちらでと、すぐさま献立が出来上がった。

赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

そしてまずは、何はなくともサッポロラガービール、赤星だ。店の奥にある年代物の水冷式冷蔵庫でほどよく冷やされた赤星をトクトクと注いで……。

――いただきます!

赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

宇賀: んんーーおいしい。やっぱり外で飲むお酒はいいですねえ。そして、口開けには赤星が最高です。

やってきた刺盛りは、マグロの赤身にイサキの皮霜焼き、ホタルイカ、ホタテ、とり貝。春らしい顔ぶれ。季節のものを少量ずつ、ちょうどいい分量なのがまた嬉しい。

赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

宇賀: まずはイサキから……軽く炙った皮目が香ばしくておいしい! ホタルイカもプリップリ。今シーズンでナンバーワンかも。

今日はお魚が食べたかったの。ふぐ以外にもいろんなお魚を用意しているんですね。うれしい!

赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

「うちは値段は手頃だけど、ちゃんといいものを使ってるよ。魚は50年来の付き合いの築地の一次卸しから仕入れてるからね。赤坂の料亭と違って“大間のマグロ”とかブランド物ではないけど、それに負けない旨い魚を工夫して選んでいるから。値段は赤坂の料亭の10分の1だよ」

軽妙なトークを展開しつつも、井上さんの手が止まることはない。

赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

■運命に翻弄されながら料理の世界へ

続いて、ふわりと湯気を上げながら登場したのは若竹煮。京都の新タケノコをやはり旬の鳴門ワカメ、菜の花と炊き合わせたテッパンの春の味覚だ。

赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

宇賀:おいしぃ〜。今年お初のタケノコ、こんなにおいしいのをいただけて幸せです。それにしても、タケノコとワカメ、そして木の芽の最高すぎる組み合わせ、一体誰が考えたんだろう。

そして菜の花がお出汁を吸ってまた絶品。このほろ苦さが赤星とよく合うなあ。子どもの頃は、なんでオトナはこんな苦い葉っぱをよろこんで食べてるのか不思議だったけど、ワタシ、苦味をたまらなく感じるお年頃になりました(笑)。

赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

井上さんは葛飾区立石の出身。かくしゃくと楽しそうに料理している姿は、これぞ天職を得たり、とお見受けするが、実は料理の世界に入ったのはのっぴきならない事情のためだったそうだ。

「うちの家は立石でゴム製品の工場をやっていてね、自分はそれを継ぐもんだと思ってたの。ところが、高校生の時に商売が傾いちゃってね、もう学校に行っている場合でもなくなっちゃった。高校を辞めて、親類のツテで料理屋で働くようになってね、それが日本料理の店だったの。18の時だったから、かれこれ65年も料理してるんだねえ(笑)」

正統派の日本料理一筋に修業を積んだ井上さんは、赤坂、浅草、向島などの店で板長として腕を振るった。その勤め人時代、同僚の悦子さんを見初めて、東京オリンピックが開催された1964年に結婚。長男の博樹さん、長女あゆみさんの子宝に恵まれた。

赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

その後、30歳の時、満を持して「太助」を開き、晴れて一国一城の主となった。赤羽を選んだのは、自宅があった埼玉県与野から浅草への通勤に使っていた京浜東北線の主要な駅であり、尊敬する先輩に「ここにしろ」と言われたからだとか。

「当時は、よく大水(洪水)になって、電車やバスがよく止まったんだよ。赤羽で足止めをくって帰れなくなる人が多かったから、飲み屋は大水のたびに儲かったの(笑)」

宇賀: へえ〜。荒川が? 今では想像つかないです。「太助」という屋号の由来はなんですか? お名前と違っているし、「大」じゃなくて「太」という字なのもめずらしいですし、気になりすぎます。

赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

「小学校の先生に、『お前には博行なんて名前はむず痒い。大助って感じだ。よし今日からお前は大助だ』とみんなの前で言われたの。それを境にみんなに大助って呼ばれるようになっちゃって…」

宇賀: そんな、理不尽な(笑)。

「それで、店は大助にしようと思ったんだけれど、どうも『大』の字の印象が強すぎると気になってね。どこかに点を足して弱めようと右上に打ったら、『犬』になっちゃって(笑)。ま、打つならここかなと出来上がったのが『太助』というわけ」

宇賀: はははは、落語のようなエピソードですね。とてもステキな名前だと思います。

赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

■ひれ酒と夫婦愛にほろ酔い加減

焼き物に選んだのは、甘鯛の西京焼き。良型の甘鯛のなかでも、特にいい部分を京都の白味噌に漬け込み、炭火でじっくり焼き上げた一品。付け合わせも、フキノトウ味噌、サザエの肝の煮付け、甘く煮たリンゴ(!)と抜かりない。

赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

宇賀:(ひと口をしみじみ味わって)うわっ、これ、美味しすぎる。優勝! 黄金色に輝いているし。西京焼の最高傑作です!

もうこうなったら、日本酒いっちゃいますよ。おお、ひれ酒があるじゃないですか! すみません、ひれ酒をひとつお願いします。

赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

宇賀: 実は私、大学時代に、池袋にあったふぐ屋さんでバイトしてたんです。飲食店で働くなら、学生時分にはなかなか行けないようなお店がいいなと思って。チェーン店みたいなところで、すごく高いお店ではなかったんですけどね。

そこでよくひれ酒をつくっていましたよー。ひれを炙って、お酒を飛び切り燗につけて。お客さんの前でポッと火を点けて……。

アルバイトの特典として、月に1度だけ、1000円でふぐを食べ放題、ドリンクも飲み放題でいただけたんですよ。だから考えてみたら学生の時のほうがふぐを食べてたかも。今シーズンなんかは全然機会がなくて、危うく食べずに終わるところでした。

赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

長男の博樹さんが、ひれを遠火でこまめにひっくり返しながらじっくりチリチリと焼いている。なんともいい香りが漂ってくると、井上さんがふぐの刺身、関西で言うてっさを切ってくれた。

この日は東京湾で獲れた天然のトラフグ。東京湾は水質が向上して久しく、脂がのった“金アジ”をはじめ、良型のタチウオやアナゴなどが揚がるようになっている。東京湾のトラフグは近年徐々に獲れるようになってきたそうで、味のほうもなかなかと評判だ。

赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

薄造りを大胆にも3枚一挙に取って、ポン酢にタッチアンドゴーで頬張る。じっくり噛み締めつつ、熱々のひれ酒をキュッ。

宇賀: ふぐよ、なんでキミはそんなにおいしいんだい? ひれ酒よ、ひれを日本酒に入れるって、なんて罪なことをしてくれるんだい?

ひれ酒を楽しみつつ、冷えた赤星をチェイサーでいただくのがまた格別だ。

赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

団長は大好物のふぐの唐揚げに夢中。おまけに一緒に揚げてくれた甘鯛のウロコ付きの皮のおいしさにも目を丸くしている。

その目が何気なく飾られたモノクロ写真にとまった。開店前にお品書きを書く博行さんに、ちょこんと体を寄せる悦子さんの微笑ましいワンシーン。結婚する少し前の写真だそうだ。

赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

宇賀: ご主人、俳優さんみたいに二枚目! あ、今もですよ(笑)。奥様も美人!

「カラー写真の方は、カミさんが脳梗塞で倒れてリハビリ中の時だね。10年ほど前に逝っちゃったんだけど」

宇賀: おふたりともいい笑顔! このお店で幸せな時間を過ごしてきたことがこの写真からも伝わってきます。

赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

■健康の秘訣はゴルフと酒、そして板場の仕事

宇賀: ご主人は立ち姿も美しいし、今でもとてもお若い。元気のヒミツはなんですか?

「ゴルフかな。今でも毎月ラウンドしてるんですよ」と井上さんが答えると、博樹さんが「うちが不定休なのはね、ゴルフの予定が入った日を休みにするからなの。不規則にね」と釘を刺す。

「それとね、お酒ですよ。1年のうち350日は飲むかな。決まって赤星から始まって、焼酎かウイスキーをほどほどに。飲めって言われたら仕事中だって飲みますよ」と井上さんが答えると、間髪を容れずにも博樹さんは「言われなくても飲んでるだろ」とツッコむ。

「長年付き合いのある氷屋さんが毎晩20時頃に来てたんだけど、それを合図に飲み始めるのを習慣にしていてね。お客さんにも『あ、氷屋さんが来たから飲んでいいよ』なんて冷やかされてね。でも、氷屋さんが辞めちゃったもんだから、飲んでよしの合図がなくなっちゃって。たまにフライングしてるよ」とまたもやチクリ。親子の掛け合いがなんとも軽妙だ。

赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

宇賀: ふふふ。健康の源はゴルフとお酒か。私もゴルフ始めようかな(笑)。現役でお仕事されているのも健康の秘訣じゃないかしら。

ところでこちら瓶は赤星、生は黒ラベルですけど、それはどうして?

赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

「この店を開く時に、サッポロビールの営業マンが尽力してくれて、資金がなかったけど酒の仕入れ先を確保できたんだよね。その人への恩義からうちはサッポロ。53年一度も浮気してないよ(笑)。ま、なにより旨いビールだから浮気せずに済んでるんだけどね、ははは」

〆は創業からの人気メニューである太助めしで決まり。椎茸とタケノコ、鮭などの具材に彩られた蒸し鮨だ。

赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

宇賀: きれい。桜の花びらの生麩と菜の花で、春仕様になっているんですね。香りも爽やかで、食欲をそそります。

ああ、おいしいなあ。シンプルな塩味で、具材の風味にごはんが包まれていて。もうお腹いっぱいかなと思っていたけど、不思議と食べられちゃうのはどういうことでしょう(笑)。

赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

このごはん、おつまみにもなるんだよなあ。よし、ひれ酒もつぎ酒をしちゃおうっと……。

今日は名残のふぐと春の香りを堪能させていただきました。次のふぐシーズンが始まるまでに、今度は夏のお魚も食べに来たいな。また必ず寄らせていただきますね。

赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

――ごちそうさまでした!
(2022年4月15日取材)

撮影:峯 竜也
構成:渡辺 高
ヘア&メイク:室橋佑紀(ROI)
スタイリング:近藤和貴子
衣装協力:プラステ(ワンピース¥13,000)
ヴァンドームブティック/ヴァンドームブティック 銀座三越店(イヤリング¥16,500)
プラス ヴァンドーム/プラス ヴァンドーム ジェイアール名古屋タカシマヤ店(リング¥12,100)
chay collection by DIANA/ダイアナ原宿店(サンダル¥17,600)

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