昭和なアニキが語る定番服と赤星の名店「アニ散歩」
福ちゃん

<6本目>

シャンブレーシャツと「福ちゃん」の焼きそば

季節の変わり目は、シャツを裾出しで着ることが多い。白シャツがデフォルトだが、今回はシャンブレーシャツ。厳密には、ダンガリーシャツとは織り方が違うのだ。細かいウンチクを語るとエンドレスになるので薄手で明るいデニム色のシャツということで。

いつもの白パンに、お気に入りのシャツを羽織って向かったのは浅草。あの昭和遺産的ランドマークでもある花やしきのタワーが、なんと10月に取り壊されてしまうということで、最後に一目見ようと銀座線に乗り浅草を目指した。

地下鉄浅草駅の改札を出て5秒後に突然現れたド昭和な地下街。一瞬昭和にワープしてしまったかのような気分で興奮を抑えきれない俺。浅草地下商店街? これは花やしきどころではない。散歩魂に火が付いた。

配線むき出しの天井に中古のDVDショップ。

700円の床屋に立ち食いそば屋。

占いの館まである。まるで昭和テーマパークのようだ。

タイ料理屋もいい感じ、この地下街だけではしご酒できそうなアニ散歩の宝庫だ。

昭和な地下街を満喫したところで、入り口にあった焼きそば屋が気になり戻ってみると、サッポロビールの文字が。赤星がありそうな匂いがプンプンする。通路にはみ出た鉄板ブースも気になってしかたがない。

メニューをよく見てみると、なんと完全に昭和酒場の王道メニューではないか。これは昼飲みするしかない! 飲むなら今しかねぇ!

俺の臭覚に間違いはなかった。なんとビールは赤星しか扱っていない。さっそく通路にはみ出た地下街のテーブル席で赤星を注文。

美味すぎる。すべてがリアル昭和な空間で至福の一杯がたまらない。しかも駅地下なのに灰皿がおいてあるなんて、この通路は東京メトロのものではないのか?謎が深まる。

さてさて、メインの焼きそばの前に何かつまみたいのでギョーザを注文。鉄鍋で焼いてるぞ!!期待が高まる。

笑顔で焼きたてのギョーザを持ってきてくれた女性も気になるなあ~。

絶妙な焦げ目にやや小ぶりなルックスは俺のストライクゾーン。

一口食べてみると、正にあなどれない美味さ。焼きそばにも期待が高まるってことで追加注文してみる。

通路にはみ出た鉄板ブースで、先ほどの女性が焼いてくれる。しかもとびっきりの笑顔で。

俺は我慢できず、気が付くと鉄板の横に立っていた。

あ~もう我慢できない。食べたい!食べたい!食べたい!

この女性は、ここ「福ちゃん」の看板娘、ハルちゃん。こんな出会いがほろ酔い散歩の醍醐味だ。

できた~笑顔のこもった焼きそば!!

やばい。やばすぎる。昭和な皿にのったシンプルな焼きそば。具は桜エビ、揚げ玉、キャベツのみで麺はしっかりと存在感のある太麺。肉なんか入ってなくていいのだ。

マジで美味すぎる。あまりに興奮して青のりをかけることを忘れてしまったがシンプルの極みということでそれもOK。

店独自でブレンドしたソースがモチモチの太麺にからまり、ハルちゃんの愛情も隠し味。

カウンターに移動してほろ酔い気分の俺に優しく話し相手になってくれたハルちゃん。10年前からここで働いているとのこと。なんと二児のママで、通路にはみ出た鉄板ブースで焼きそばを焼いているときに出会った男性が今の旦那さん。

なんて素敵なラブストーリーなんだ……。またしても涙目な俺。

謎だらけのこの地下街についても聞いてみた。この地下街は現存する日本最古の地下街で、1955年に地元商店街の有志が浅草駅から多くの買い物客を呼び込もうと造ったものだと。東京メトロの管轄ではなく地元民のものなのだ。

再開発されず、この状態を保っている理由がわかった。

ついついこの地下街で寄り道をしてしまったが、そんな散歩で赤星と焼きそば、そしてハルちゃんの笑顔に出会えた。地下街から出て仲見世をブラブラし、本来の目的だった花やしきへ。

残念なことにこのタワーは10月には消えてしまう。昭和遺産の宿命なのか、せつなく見える。タワーは消えても浅草地下街は戦後の昭和を今も感じさせてくれる。ぜひ浅草に行く際は、この地下街を通ってほしい。そこには本物の昭和が今もあるのだから。

数年前に高円寺で偶然出会った古着のBIG MACシャンブレーシャツ。MADE IN USAで70年代当時のものとは思えない細身のシルエット。比較的リーズナブルに手に入れられるヴィンテージも悪くない。

Text:Eiji Katano
Photo:Mamoru ichikawa

店舗情報

福ちゃん

[住所] 東京都台東区浅草1-1-12 浅草地下街

[TEL] 03-3844-5224

[URL] https://tabelog.com/tokyo/A1311/A131102/13022914/

[営業時間]

火~金 11:30~21:00

土・日 11:00~20:00

定休日 月

【プロフィール】

片野英児(かたのえいじ)

1968年生まれ。昭和とメンズ服飾を愛してやまない47歳。小誌編集長の干場(ほしば)がアニキと呼んだことから、いつしかアダ名がアニキに。趣味は、スナックで昭和カラオケ。呑みすぎると、歌いながら、なぜか干場と泣き合う熱き男。好きな場所は軍艦島。

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