はじめてジーンズを買ったのはアメ横だった。当時、サングラスや革ジャン、ミリタリーなど、インポートものはここでしか手に入らなかった時代だ。俺は、戦後の闇市のような雰囲気に夢中になった。
10代の頃から履き続けているリーバイス501は大人になっても永遠のマイ・スタンダード。そこで、B.D.シャツに黒のニットタイをゆるめに締め、そんな思い出の地アメ横を散歩してみることにした。
このアメ横センタービルは、以前バラック小屋のような店舗が連なっていたマーケットで、日本のセレクトショップ発祥の地でもあるのだ。
高架下をブラブラしながら、たどり着いたのは大衆昭和中華の「昇龍」。この辺りは昼間から飲んでいる人が多い。
店先でギョウザを包んでいる光景もアメ横ならではだ。腹が減ってきた……。
カウンターのみの店内もいい感じ。ギョウザの値段も昭和のままだ。
ギョウザと赤星を注文し、焼きあがるまで待つことに。お店を仕切るおばちゃんの「コーテル」という声が店内に響く。コーテルってなんだ?
コーテルが気になるが、赤星で至福の一杯。
ほとんどのお客が注文するギョウザは次々と休むことなく焼き続けられていく。
美しい焼きあがりにウットリ。ジャンボサイズなので1人前は4個だが十分お腹いっぱいになる。
はやく食べたい!!もうすぐだ~
ジャンボギョウザをガブリつき、口の中でパリパリ皮とジューシー餡のハーモニーが広がる。美味すぎる!!
赤星を飲む。ギョウザ、ビール、ギョウザ、ビール!!幸せだ!!ギョウビー最高!!
ここで前半戦は終了。赤星でギョウザを2個食べたところでライスを注文するのが俺流。今度はおばちゃんの「パイハン」という声が響く。
パイハンってなんだ?気になりつつも残りの2個で後半戦スタート。
やばい!!ギョウザライス!!美味すぎて唸ってしまった。
このガード下で「昇龍」の味は、寡黙な男たちによって40年間守り続けられている。
「コーテル」、「パイハン」と注文コールを叫んでいた笑顔が素敵なおばちゃん。混雑時の店内をさばくスピーディさもこの店の魅力だ。
コーテルとは焼きギョウザで、パイハンは白いご飯という意味だったのだ。厳密には中国語ではなく日本独自に解釈された中国語とのこと。
今日もアメ横のガード下でギョウザライスの注文コールを、おばちゃんは元気に「コーテルパイハン」と叫んでいるだろう。再開発されずいつまでもこの昭和なガード下が残ってくれることを祈る。
この501は、リーバイス ビンテージ クロージングの1947年モデル。当時の雰囲気を再現しながらアップデイトされた復刻シリーズ。本物のヴィンテージ古着も悪くないが生デニムのリジッド状態から育てて履けるのも魅力。
Text:Eiji Katano
Photo:Kou Maizawa