世代間ギャップも一瞬で埋めてしまう、赤星にはそんな不思議な力がある。では昭和オヤジとギャルがグラスを重ね合わせたら、どんな話題で盛り上がるのか? 互いの世代の文化や考え方、お酒の楽しみ方…お酒をこよなく愛する玉袋筋太郎さんと、トレンドに敏感な『ViVi』ゆかりのタレントが、世代のギャップを超えて酒場で交流します。
ランチタイムは行列になるほどの大人気店
代々木公園駅から少し歩いた、富ヶ谷の“奥渋”の一角。 今回訪れたのは、鎌倉発の本格麻婆豆腐の名店『かかん 富ヶ谷店』。
鮮やかなカラーがおしゃれな店内
看板メニューは、山椒の香りと旨みがクセになる麻婆豆腐。さらに、よだれ鶏やピータン豆腐など、赤星と合わせたくなる中華の皿が次々と並ぶ。洗練された空気の中に、食欲を刺激する熱気を感じる、イマドキの“町中華”へ。
オリジナルTシャツの販売も
テーブルには、クラシックな赤い星の瓶。
酒場文化を知り尽くした玉袋筋太郎さんと、YouTuber『午前0時のプリンセス』として活躍する聖秋流さん。世代も歩んできた道も違う2人が、山椒香る中華と赤星で乾杯! 赤い星がつなぐ笑い声と共に、にぎやかな夜の幕が開いた。
聖秋流 初めまして。聖秋流(セシル)と言います。芸名っぽいんですが本名です!
玉袋 本名で聖秋流なのか。言ってみりゃキラキラネームだな。まあ、俺だってキラキラネームだけどね。
聖秋流 あはは! そうですよ、玉袋筋太郎さんの方が気になります(笑)。
玉袋 そりゃそうだよな(笑)。俺はこの名前で40年近くやってるから。
聖秋流 私は今年26歳になります。
玉袋 俺は58、59だから、親御さんに近いというより、おじいちゃんに近いかもしれないな。
聖秋流 親は1978年生まれです。
玉袋 若いなあ! 俺のことは玉ちゃんって呼んでよ。
聖秋流 私は聖秋流って呼んでください!
ピータン豆腐はのんべえのコーヒーゼリー
ピータン豆腐600円
最初に運ばれてきたのは、ピータン豆腐。
黒く艶やかなピータンに、なめらかな豆腐。ひと口食べれば、独特の香りとまろやかさが広がって、赤星のすっきりした苦味がすぐに欲しくなる。
聖秋流 私、ピータン初めて食べます。
玉袋 人生初ピータンか。このピータンを称して、のんべえのコーヒーゼリーって言うんだよ。
聖秋流 わ、初めてだけど、めっちゃ美味しいです、これ!
玉袋 赤星でピータンを流し込む! 最高の組み合わせだろ?
四川風よだれ鶏1200円
玉袋 よだれ鶏、麻婆ナスの山椒揚げもいいねえ。赤星が進むわ。
聖秋流 これもめちゃくちゃビールに合いますね! ゴクゴクいっちゃいます。
玉袋 聖秋流は、のんべえの素質があるよ。
ナスの青山椒揚げ800円
滋賀から東京へ 居場所を見つけて広がった世界
聖秋流さんは滋賀県出身。関西弁の柔らかさをまといながらも、言葉の端々には自分の道を選んできた芯の強さがある。今回は、昭和と令和の恋愛観についても会話が膨らんだ。
聖秋流 私、生まれ持った性別は男性なんですが、見かけは可愛くしていたくて。恋愛対象は男性。いまは女性になりたい気持ちはまったくない、いわゆるXジェンダーです。それで、高校生の時に、初めて親に“彼氏できたんだよね”ってカミングアウトしました。
玉袋 いいね。親御さんの反応はどうだったの?
聖秋流 “どんな彼氏?”って感じでした。もともと幼稚園の頃から女の子の友達しかいなかったので、親もなんとなく分かっていたと思います。滋賀にいた頃は、自分と同じような感覚を持つ人は周りにほとんどいなくて。テレビの中にいる人たちを見て、『こういう人もいるんだな』って思ってました。だから、東京に出てきてからの方が、自分と同じ境遇の人やさまざまなジャンルの人と出会えて楽しいです。上京してホームシックになるかなと思ってたんですけど、逆でした。
玉袋 殻を蹴飛ばして外に出るしかない時っていうのもあるんだよな。
聖秋流 玉ちゃんは、若い頃はどんな恋愛をしてたんですか?
玉袋 俺は自分からガンガン行くタイプじゃなかったんだよな。
聖秋流 えー! めっちゃ意外!
玉袋 好きな子がいても、遠くから見てるだけ。話しかけるのも苦手だった。今みたいにSNSもないからさ、気になる子がいても、ただ眺めて終わりなんてことも多かったな。
聖秋流 かわいい時代もあったんですね(笑)。
玉袋 今でもそうだよ。恋愛って、自分から行くというより、向こうの扉が開くのを待ってるタイプかもしれないな。
海老と豚の水餃子(4個)480円
“開かれた世界”は、すぐ隣にあった
玉袋 俺は新宿生まれ。うちの両親が商売をやってて、俺が中学2年生頃からスナックを始めたんだよ。両親から“お前はあんまり店に近づくんじゃないよ”って言われててさ。その時は、なんで俺が行っちゃいけねえんだろうって思ってた。でもだんだん分かってきたんだよ。うちの両親がやっていたのは、ゲイのスナックだったんだ。当時は偏見もあったし、大人の社交場だったのもあって、そう言ってたんだろうね。
聖秋流 そうだったんですね。
玉袋 ただ、今考えれば、開かれた世界が俺のすぐ隣にあったんだよな。両親は俺を育てるために商売を始めたわけだし。すべて含めて感謝できるようになったんだけど、その時にはもう親は亡くなってたんだよね。
聖秋流 そっか……。
玉袋 だから俺は、声高に多様性をうたうことはしないけど、当たり前に近くに居たその人たちを見てきた感覚がある。俺もそういう星の下に生まれたんだと思うよ。
聖秋流 こういう話って、どうしても受け止めてもらえないときもあるから、話す人を選ぶけど、玉ちゃんとはすごく話しやすいです。
玉袋 こっちだって助かるよ。こうやって聖秋流と赤星を飲んで話せるんだから。
チューニングを整えてくれる酒場の力
ジェノベーゼ冷麺1480円
聖秋流 玉ちゃんは、芸能人のお友達と飲むことが多いんですか?
玉袋 いや、そうでもない。ペンキ屋の親父とか、大工の棟梁とか、一般のおじさんたちと飲むことも多いよ。芸能界は華やかな世界で、そこに染まると感覚がズレちゃうんだよ。だから一般のおじさんたちと飲んでチューニングを直してるんだ。
聖秋流 それ、めっちゃ分かります。私も、表に立って活動している友達のほうが少なくて。いろんなジャンルの職業の人と飲みに行く方が好きなんです。それに同業者同士だと、どうしても見栄や緊張が生まれちゃう。違う世界にいる人と飲むことで、自然体に戻れるんです。
玉袋 お互い、いろんなジャンルの人たちと馬が合うってことだな!
赤星は、そのチューニングのための潤滑油。 グラスを挟むことで、年齢も職業も違う2人の会話が、少しずつ同じ温度になっていく。
知りすぎる恋と、知らないままの余白
聖秋流 私、人のMBTIとかラブタイプを聞くと、ある程度どうしたらいいか分かっちゃうんです。
玉袋 MBTIってのもよく分かんないけど、ラブタイプってのも何だ?
聖秋流 MBTIは心理学のタイプ論で、パーソナリティタイプを16分類するものです。ラブタイプは恋愛版のMBTIみたいなもので、“恋愛モンスター”とか“ロマンスマジシャン”とかがあるんです。私は友達の性格や恋愛傾向を聞いて、iPhoneのメモに書き起こして研究するのが好きなんです。
玉袋 それ、当たるの?
聖秋流 怖いくらい当たりますよ〜! 友達から恋愛相談を受けることも多くて。“今こういう状況なんだけど、どうしたらいい?”って聞かれて、2人の性格を聞くと、“こうLINEしたらこう返ってくると思う”って言ったりしてます。
玉袋 すごいな。それで最後に“地獄へ落ちるわよ”って言えば、細木数子だよ(笑)。
聖秋流 ちょっと!(笑)。でも、人のことを知りすぎても良くないなと思う時があります。恋愛は、私は結構こじらせてる方かも。
魯肉飯950円
玉袋 分かりすぎるから、あえて外したくなるってことだな。
聖秋流 そうなんです。相手が求めているであろうことが分かるからこそ、あえてそうしたくない、みたいな。
玉袋 知らないことは、知らないままにしておく余白も必要なのかもしれないね。
人生の白地図に、色を塗っていく
玉袋 俺は人間って、生まれてきた時は白地図だと思うんだよ。
聖秋流 白地図?
玉袋 真っ白な地図。経験すると、そこにだんだん色がついてくる。いろんな場所に行って、いろんな人と会って、食べたことないものを食べて。そうやって人生の白地図が色づいて完成していくんじゃないかなって。
聖秋流 なんか、ハッとしました。
玉袋 それに、立ち位置が違うからこそ、見える景色がある。こっちの立ち位置にいるから、向こう側が見えるってこともあるんだよ。
麻婆豆腐950円
そんな話をしていると、待ってましたと言わんばかりに麻婆豆腐が登場。
しびれる辛さと夏の赤星は最高の組み合わせ。湯気の向こうから立ち上がる山椒の香り。スパイスと痺れがじわじわ広がる“大人の麻婆豆腐”は病みつきになる味。
聖秋流 やばい、めっちゃ嬉しい! 今日、これを食べられるの楽しみにしてました。
玉袋 これは白米が欲しくなるな。でも、のんべえだからライスじゃなくて赤星だ!
聖秋流 いえーい! 乾杯! 麻婆豆腐は山椒が強くて美味しいですね。私、二日酔いの日に麻婆豆腐食べるの好きなんです。辛いの食べて、汗かいて、水飲んで、よし行くぞ!って。
玉袋 いいねえ。俺は、家庭的な麻婆豆腐も好きでさ。それを“ファミマ”って呼んでんだ。ファミリーで食べられる麻婆豆腐だから、ファミマ。ここのはファミマっていうか、大人の麻婆豆腐だな。
(左)絹豆腐とあえるだけで、簡単にかかんの本格麻婆豆腐が食べられるソースセットの販売も!かかんの麻婆ソース1200円/1人前ソース×2袋・山椒入り(右)温めてご飯の上にかけるだけ。かかんの魯肉飯の餡1100円¥/2人前×1袋 ※どちらも要冷蔵
聖秋流 夏の理想の飲み方ってありますか?
玉袋 夏はビールでしょう。秋もビール。冬もビール。春もビール。
聖秋流 全部ビール(笑)。
玉袋 自分の頭の上に、いつも赤い星が光ってるってことだな。
聖秋流 お酒を飲むようになってから、夏のビアガーデンが楽しくなりました。暑い中で外で飲むビールって、こんなに美味しいんだって。
玉袋 ベランダにチェアを置いて、クーラーボックスで冷やしたビールを飲むのもいいんだよ。子ども用のビニールプールに水張って、暑くなったら足を入れてさ。
聖秋流 それ、最高!
玉袋 俺はそれを“タマランド”って呼んでる。
聖秋流 かわいい(笑)。
濃厚杏仁豆腐550円
締めに登場したのは、杏仁豆腐。
麻婆豆腐、ピータン豆腐、そして杏仁豆腐。気づけば“豆腐三昧”に。
玉袋 麻婆豆腐、ピータン豆腐、杏仁豆腐。今日は豆腐で締まったな。
聖秋流 もっちもちで美味しい!
玉袋 人間、頭が固いって言われることもあるけど、俺たちは今日、豆腐のように柔らかな思考で宴を堪能したからな。角に頭をぶつけて死ぬことはないぞ。
生まれた場所も、見てきた景色も違うけれど、赤星を挟んで向かい合えば、少しずつ相手の地図が見えてくる。初めて食べるピータンも、痺れる辛さの麻婆豆腐や昔話も、まだ塗られていない色がある。
富ヶ谷の『かかん』の一夜もまた、ギャルとオヤジの白地図の新しい色となった。
Photos:Ayako Nakamura
Hair&make-up:HIYORI
Styling:Rinka Shoji
Interview&text:Yumiko Ito
Tシャツ¥1990/神戸レタス キャミソール¥4950/アンティローザ(SHAGGIE)
パンツ¥10890/ゲスコールセンター(GUESS)
チョーカー¥9900/805showroom(aw)



と赤星
と赤星


