私たち「赤星探偵団」が、
あしで稼いだ“おいしい情報”を発信します

赤星が飲めるお店を探す オリジナル限定商品 ブクマーク一覧へ

赤星酒場見聞録

赤星酒場見聞録 File No.12

八幡では麗しき女将がイカを釣って待っていた -北九州遠征 前編-

「大衆酒場Twin」

公開日:

今回取材に訪れたお店

大衆酒場Twin

ブックマークする

はるばる来たぜ、北九州

八幡では麗しき女将がイカを釣って待っていた -北九州遠征 前編-

サッポロラガービール、愛称「赤星」を飲める酒場を巡り、飲みかつ食べる「赤星酒場見聞録」。今回はその12回目になるのですが、取材隊ははるばる北九州へ飛びました。

 

八幡では麗しき女将がイカを釣って待っていた -北九州遠征 前編-

空路北九州に入った取材隊がまず向かったのは八幡。小倉駅から鹿児島本線で15分ほど走ると、明治期の日本の重工業化をけん引した製鉄の街、八幡に着く。

目当ての店は「大衆酒場Twin」。スマホを見ると、歩いて5分ほどのところにあるようだ。駅前のロータリーを抜けると、周囲はマンションが多い。かつて来た時に見た八幡の印象とかなり異なっている。視界の開けたところで、山が目に入ってきた。頂上に電波塔のようなものが見える。けっこう高い。

地図で調べると、皿倉山だった。若松や洞海湾方面から、小倉方面など、北九州を広く見晴るかす眺望が素晴らしいらしい。

高さは622m。おお! 我が地元の高尾山より23mも高いではないか。とりわけ夜景が美しいという。一度登ってみたい。

 

八幡では麗しき女将がイカを釣って待っていた -北九州遠征 前編-

そんなことを思ううち、もう店の前に着いていた。約束の入店時刻は午後4時半。開店の少し前ということになっているのだが、私はこの日、東京は多摩の自宅を8時半に出てバスで羽田空港へ向かったので、このときすでに、移動時間は8時間に及んでいた。

八幡では麗しき女将がイカを釣って待っていた -北九州遠征 前編-

はるばる来たぜ、北九州。そんな感じでやや興奮気味だ。しかも、小倉駅ホームのうどんもラーメンもぐっと堪えてやって来たので腹も減っている。もちろん、酒は一滴も飲んでいない。私は渇き、そして飢えていた。

今回も営業、マーケティング、広告宣伝などの若手たちと、撮影キヨコさん、編集ナベさん、そして、老いるライターこと不肖オータケが取材隊を編成。北九州エリア担当の営業の方にも加わっていただいて、かなり盛大に乗り込んだ。

 

八幡では麗しき女将がイカを釣って待っていた -北九州遠征 前編-

店を率いるのは女将の鶴﨑理絵さん。9年前に友人と一緒にこの店を始め、現在は調理場担当の西平さん(愛称にっしー24歳)と、ホール担当のアルバイトさんを率いて、流行る店を切り盛りしている。

 

移動の疲れが霧散する

八幡では麗しき女将がイカを釣って待っていた -北九州遠征 前編-

カウンターにつくや、「赤星ください!」と発声。渇きはどうやら本物のようだ。

目の前のネタケースの中に並んでいる魚は何かと問うと、にっしーがにこにこしながら教えてくれた。

「シマアジ、イサキ、キアラ、カンパチ、ヤリイカです。キアラというのは、アオハタの北九州での呼び名です」

八幡では麗しき女将がイカを釣って待っていた -北九州遠征 前編-

ほう、ハタか。クエとかアラみたいな顔してんのかな。まあ、きっとうまいに違いない。絶対に注文すべし。そう心に決めていると、

「このイカ、あたしが釣ってきたんで!」

女将さんが目を輝かせて言うのである。釣り船に乗船して玄界灘で釣ったヤリイカだという。釣り方はイカメタル。ルアーフィッシングの一種で、イカのいる深さのところで竿をあおり、イカをひっかける釣り方だ。決して易しいとは思えないが、女将さん、その週の日曜の釣行では60匹もあげたのだそうだ。美貌の女釣師である。

 

八幡では麗しき女将がイカを釣って待っていた -北九州遠征 前編-

赤星とグラス、お通しの小鉢が出てきた。このお通しは何か? 魚卵であるのは間違いないが……。私はまた、にっしーに訊いた。

「イサキの白子と卵です」

よく見ると、卵の上に、たしかに白子がのっている。見たことのない小鉢の中の光景なのだが、そもそもイサキの白子と卵を食べるのは初めてだ。

冷たくて、味わい深く、品がいい。思わず言葉を失っていると、

「お出汁で炊いてから冷やしてあるんですよ」

と女将さんが教えてくれた。

 

八幡では麗しき女将がイカを釣って待っていた -北九州遠征 前編-

にっしー、若いのにやるなあ。

続いてビールに合うつまみとして登場したのは、青菜炒めとトロ旨レバーだ。私は青菜とビールの組み合わせがとても好きなので迷わず頼んだが、もう1品のトロ旨レバーのほうは、にっしーの自信作だというので、注文したのだった。

 

八幡では麗しき女将がイカを釣って待っていた -北九州遠征 前編-

料理が出てくるたびに撮影をするキヨコさんが、シャッターを切った後、トロ旨レバーの皿を見ながら言った。

「見るからにうまそうや!」

たしかに。タレに半身を沈めたきれいな鶏レバーに小葱がぱらりと振ってある。皿の隅にはおろしたニンニク。皿全体が照り輝いている。レバーは生に見えるが、30分ほどかけて低温調理してあるという。

見るからにだけでなく、聞くからにも、うまそうやないか――。私はそう思い、口に運んでみて、唸ったのだった。

八幡では麗しき女将がイカを釣って待っていた -北九州遠征 前編-

トロトロで、ゴマ風味、でもしつこくなく、口の中で溶けてしまう。うまいぞ、これは――。3皿くらいほしい。それが嘘偽りのない感想だ。

低温調理のレバーと青菜炒めの2品が、冷たい赤星に合うのは言うまでもない。渇き、そして飢えていた私の心と胃袋を、うまい酒肴が満たしていく。8時間の移動の疲れが霧のように散り、雲のように消えていく。

 

玄界灘の鮮魚たち

八幡では麗しき女将がイカを釣って待っていた -北九州遠征 前編-

酒と肴というのは実に不思議だ。とても疲れていたり、胃腸の具合が悪いときでも、1、2品のうまいつまみと1本のビールで、疲れは飛び、胃痛もむかつきも膨満感も瞬時に解消されてしまうことがある。

不思議だ。なぜなのか。酒飲み生活も43年を数えるが、いまだにわからない。

しかし、そんな高尚な悩みに沈む暇はなかった。目の前に出された刺身の盛り合わせに箸をのばす。イサキがうまい。肉厚でコリコリしていて抜群だ。そしてキアラ。想像どおり、うまみの深い魚だ。これ、1日か2日か、熟成させているのだろうか。魚はにっしーが市場で見て仕入れてくるという。

八幡では麗しき女将がイカを釣って待っていた -北九州遠征 前編-

市場とは、店からも遠くない、北九州市中央卸売市場のことだと、女将さんが教えてくれる。

「市場に、港寿司っていうお寿司屋さんがあるんですよ。おすすめです。おいしくて、安い。お昼には閉めてしまうし、人気の店ですから予約したほうがいいかもしれないけど、ほんとに、行ってみてください」

八幡では麗しき女将がイカを釣って待っていた -北九州遠征 前編-

自分の店より、地元のおいしいところを紹介してくれるのだ。ありがたいねえ。

ほかにも隣町の黒崎なら魚虎とか、おすすめ店を紹介してくれるので、日ごろ、いろいろ飲みに出かけているのかと思い、訊いてみた。

「私は小倉の出身で、今も、飲むのは小倉です。飲むときは、朝の4時までやってるラーメン屋さんにたどり着きますね(笑)」

「ああ、丸和前ラーメンね」

「知ってるんですか」

私は実は、小倉にはちょっと詳しい。

「すごく酔っぱらっても、なぜか最後、丸和前にたどり着いて、ラーメンの前におでんで酎ハイなんか飲んでる(笑)。あれ、なんなんだろう」

他にも、魚町銀天街にある古い居酒屋とか、駅前の24時間営業の居酒屋とか、店の名前を出しては、そうそう、あそこもいい、とか、安いですよね、とか、しばし、小倉飲み屋話に花が咲いた。一度、午前4時までご一緒したいものだ。

 

旨いですとも、女将のイカ

八幡では麗しき女将がイカを釣って待っていた -北九州遠征 前編-

入店直後から座敷に陣取った若手チームも、すでにして、トロ旨レバーや絶品刺身の盛り合わせなどで盛り上がりを見せている。うまいなー、これ、サイコー! と声が上がる。

そこへ、女将さんが割って入る。

「え? なに? 私のイカがおいしい?」

 

八幡では麗しき女将がイカを釣って待っていた -北九州遠征 前編-

キヨコさんもナベさんも飲みに合流。里いもや、大根、ゴボウの唐あげなどがまた、赤星によく合う。

開店時刻になって、ふたりのアルバイトさんもホールの仕事についた。颯馬さん(20歳)と紗菜さん(20歳)。年齢から生まれ年を何気なく逆算して颯馬さんに質問した。

2006年生まれ?」

「そうです」

 

八幡では麗しき女将がイカを釣って待っていた -北九州遠征 前編-

嗚呼、2006年といえば私が痛風の最初の発作に見舞われた年ではなかったか?

今となっては昔のこと、と語り始めたいほどの昔話ではあるが、あの頃生まれた若者が酒場で働く時代となったのか。オレも年を取るわけだが、こんな素敵な酒場で出会えたことが嬉しくもあり、老いるライターはますます元気になってくる。

 

八幡では麗しき女将がイカを釣って待っていた -北九州遠征 前編-

にっしーの一番の自信作だという、四川風麻婆豆腐をみんなで味わう。これは、町中華というより本物の中華の味。料理はすべて独学、好きこそものの、のたとえのままに上手になったというが、にっしーの腕は本物だ。きっと、うまいものを作ることに、深い興味を持っているんだな。

ものを作る人の鑑。私のようなくされ物書きも、見習わなくてはならないと決意を新たにした。

 

赤星を飲み尽くさん

八幡では麗しき女将がイカを釣って待っていた -北九州遠征 前編-

店の赤星が底をつくぞ!

入店から2時間もすると、そんな感じになってきた。北九州は八幡に出撃した赤星酒場取材隊は、本日もまた元気に楽しく飲み、かつ喰うのである。

 

八幡では麗しき女将がイカを釣って待っていた -北九州遠征 前編-

ここで真打、ゴマサバの出番である。

新鮮なサバをゴマダレであえた九州の料理。以前、博多の居酒屋で絶品のゴマアジに痺れたけれど、にっしーのゴマサバは、アジより脂ののった逸品だった。今宵の酒の締めに飯にかけて掻き込みたい。そんなゴマサバ。最高でした。

八幡では麗しき女将がイカを釣って待っていた -北九州遠征 前編-

気が付けば、2人連れや4人のグループが入店しており、カウンターにはひとり客の姿もある。賑やかになるのはこれからだ。

我らのテーブルには、今頃になって焼きナスなんて、さっぱり系のつまみも登場。さては、いったん濃厚系から淡麗系へと味覚を更新し、酒宴を新規でやりなおす心づもりの人間がこの中にいるのか。なにしろこの取材隊の食欲、飲欲は、実に旺盛なのである。

 

八幡では麗しき女将がイカを釣って待っていた -北九州遠征 前編-

なぜか餃子も来た。このチーム、どこへ取材に行っても餃子食べてるなあ……

感心しながらひとつもらうと、これがまた、おいしい。

 

八幡では麗しき女将がイカを釣って待っていた -北九州遠征 前編-

私は実に調子がいい。
さて、一軒目はこれくらいにして、小倉へ繰り出すか……

と口に出そうかと思った刹那、塩辛をのせたじゃがバターが運ばれてきた。じゃがいもといえば、素通りできないのはナベさんだ。そっと伺うと、実に嬉しそうな顔をしているのだった。

(北九州篇は次号へ続く)

 

八幡では麗しき女将がイカを釣って待っていた -北九州遠征 前編-

(※2026年6月11日取材)

取材・文:大竹 聡
撮影:衛藤キヨコ

この記事シェアする