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100軒マラソン File No.60

町田で飲むならココ、と思える店を手に入れた幸運

「酒蔵 初孫」

公開日:

※撮影時以外はマスクを着用の上、感染症対策を実施しております。   日本のラガービールのさきがけ、サッポロラガービール=通称「赤星」の飲める店を訪ね歩く「赤星100軒マラソン」。今回は、記念すべき60回目であります。 取材チームはいつものように、店から店を経巡るマラソン酒の大好きなワタクシと、写真家のSさん、編集Hさんの3人。落ち合いましたのは東京都町田市。小田急線とJR横浜線が連絡する町田駅から歩いてすぐの「初孫」という居酒屋の前でした。

町田で飲むならココ、と思える店を手に入れた幸運

緊急事態宣言発令後のことで、通常より1時間ほど早い午後4時には店を開けるというところ、混む前に少しお話も伺いたいからと無理を言って、午後3時にお訪ねしました。 店名は、ご存じの方も多いかと思いますが、山形県の地酒の名前です。この店を開いた先代の親戚が山形県にいらっしゃった関係で、42~43年前の開店に際して酒屋さんから「初孫」を紹介してもらった。そして、その酒の名を、屋号にもしたということです。 今でこそ、知る人も多い銘酒ですが、開店当時は東京でもまだあまり知られていなかったとのこと。 それでもって、ビールはサッポロだ。これも店の伝統で、「赤星」ファンが多い。もちろん私たちも赤星を飲みに来たわけですから、さっそく1本いただきます。

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さて、最初のおつまみに何を選ぶか。 カウンターの上には、いわし団子、海老団子、ハマグリ、サザエ、サンマもある。それから、野菜。山芋やニラ、ネギ、菜の花、キャベツなどなど、いろいろ新鮮なものを取り揃えている。 一瞬迷って、セリのお浸しを注文します。この冬、コロナ禍でなかなか飲みにも出られず、自宅酒をあれこれ工夫する中で、赤星の缶ビールとすき焼きを楽しんだ際、春菊と一緒にセリを放り込んだら、格別にうまかった。その記憶も手伝って、菜の花、と言いかけて、セリにしました。

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この店のある町田市は、東京の三多摩郡の南の端です。ちなみに筆者である私が生まれ育った三鷹市は、同じ三多摩郡の、東の端っこ。三多摩郡というのは、北多摩郡、南多摩郡、西多摩郡をあわせて三つの多摩郡がありますよ、というほどの意味です。 三鷹市は北多摩郡、東隣が杉並区地と世田谷区ですが、町田市は南多摩郡、ここだけ神奈川県に飛び出しているような位置にあります。新宿始発の小田急線は、多摩川を渡るときに世田谷区から神奈川県川崎市に入り、そのまま神奈川県内を走るのかと思いきや、ふたたび東京都の町田市を通り、ここを抜けるとまた神奈川県の、今度は相模原市に入る。 明治時代には、旧東京市の西側、現在の三多摩郡の全部が神奈川県であったということで、東京もなかなか広うございます。このへんの話は、かつて、多摩川に沿って歩いて飲み下るという一種のマラソン酒を始めたとき、奥多摩駅前の居酒屋で、土地の人から教わったことです。

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目の前でさっと湯がかれたセリは、えぐみも少なく、それでいてほのかに苦みがあって、シャキシャキと歯ごたえがいい。口の中は爽快になって、最初のビールを一層おいしくしてくれます。 お店の主人は、高橋英臣さん。昭和43年のお生れというから50代前半の男盛りだ。短髪で、精悍な印象を与えます。ひょうたん柄の鯉口シャツ(いや、ダボシャツと呼ぶタイプか)が、びしっとよく似合う。一見、強面。でも、声音も話し方もマイルドで、むしろ、とてもやさしい印象を与えます。

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2品目に頼んだのは、煮込みだ。正式には、特製もつ塩煮込み。 妙ないい方になりますがね、見た目に、品がある。というか、穏やかな印象を与える。モツのギトギト感でも、味噌のこってり感でもない。いかにもモツ、という押し出しを感じさせないかわりに、なんとも上品なのだ。オツにすましているとでもいうべきでしょうか。

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澄んだ汁に、2種類のモツが浮かんでいる。というより、びっしり盛ってあるところに、白髪ネギと、小葱の輪切りもパラパラと振ってある。口元へと運んでくると、かすかに脂の浮いた汁の表面に白ゴマが浮かんでいて、これがまた、ソソル。 うまい。文句なしだ。すっきりしている。本当に上出来だな、と思わせる塩煮込みであります。

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具材は牛筋スジとテッポウ。煮込みであり、スープであり、シチューですな、これは。テッポウというのは豚の直腸の呼び名です。つまり、これを裂かずに輪切りにしたのは、おいわゆるシロコロということになりましょうか。ちなみに、シロコロというのは、町田からさらに小田急線で下っていった厚木の名物。 それはともかく、テッポウは往々にして、少し、匂う部位だ。けれど、いいネタになると匂わない。こちらの店の煮込みにおいては牛スジと合わせてあって、両者の相性の良さに驚く。この煮込みだけのために再訪したいと思わせます。

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魚も、いいネタが揃います。ご主人によりますと、仕入れのために毎朝6時前から始動するといいます。魚介類ばかりでなく野菜も扱う総合市場に通っているから、毎朝、季節のおいしいものをあれこれ品定めできるということです。3品を見繕って刺身盛り合わせということになっているのですが、 「だいたい、4品、入ります(笑)」 とご主人。私の前の皿を見れば、そのネタは赤貝のヒモ、ブリ、マグロ、タコと、なるほど4点盛りになっているのです。

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で、これがまた、いい刺身なんですな。4点楽しめて、一人前800円から。安いなあ。余計なお世話だけど、この値段で食べられるのは、お客にとってはひたすらありがたいことであるなあと感服するのであります。

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■いい色に育った壁の板を眺めながら

赤星を追加して、また1杯、グラスに注ぎます。 外はまだ明るい。当たり前です。緊急事態ゆえに早めにする開店の、さらにその前からお邪魔をさせていただいているのです。常連さんたちにも申し訳ないし、ご主人はもちろんお店のスタッフの方にもご負担をかける。あい、すいませんと、頭を垂れる気持ちが起こる。

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けれど、一方で、どうもすいやせんねえ、と頭をかきながら、やっぱり昼から飲む酒は格別だね、という思いもある。 お天道様の監視のもとで、まあ、いいじゃねえかと勝手に飲み始める。この気分は、家飲みのときでもオツなものですが、「初孫」のような、一品一品、あ、うめえな、と思わせる酒肴で飲ませる店であれば、大袈裟ですけれど、軽い陶酔を催させます。

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気が付けば、4時をまわり、お客さんが、ひとり、またひとりと、入ってこられる。私たちのいるカウンターが、少しずつ埋まっていく。店では客と客の間を仕切って飛沫を防ぐ工夫をしていらっしゃる。 まだ、夕刻。いや、夕刻のちょっと手前、くらいの時間帯だが、取材時の店の閉店は8時。酒類提供は7時までという時期であったから、ちょっと早いのは、客同士も、客とお店も、お互い了解ずみ。平素の酒を、少しばかり前倒ししているだけよ、みたいな感じもあった。

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居心地がいい。壁の板がいい色になっている。背後の窓枠も木製。風の強い晩はガタガタ音を立てるかな……。育った家の窓の桟にあった、ねじ込み式の鍵とほぼ同じものを見て、ああ、いいなあ、と思います。

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新潟県は栃尾の、油揚げをいただきます。 これ、ユニークです。ふわふわのお揚げの間に、ネギ味噌を挟み込んでいる。上に小葱とカツブシ。醤油をちょいと、と思ったけれど、ネギ味噌を挟んであるというので、そのままぱくりとやる。

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うまい。ほんわりと甘い。お揚げもふわふわ。私の知っている栃尾の厚揚げ焼きとはすいぶん異なる印象の一品なのであります。

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店名と同じ名の銘酒をいただきます。「初孫」の中の「家紋」という酒です。生酛純米大吟醸原酒だ。ピリ辛さんま焼きと合わせて、これをいただく。

町田で飲むならココ、と思える店を手に入れた幸運

ああ、うまいなあ……。

町田で飲むならココ、と思える店を手に入れた幸運

もとは、ご主人のお祖母さんがここで小料理屋を営み、後を継いだ先代が、喫茶店にし、その後、バーにし、さらに、現在の形にしたという、歴史があるのだそうです。町田は、養蚕と絹織物の街・八王子と、港町・横浜を結ぶかつての絹の道の中継地。宿場があり、馬喰たちも住んだことだろう。 三多摩郡にある主要駅の周辺は開発に注ぐ開発で昔の趣をとどめない。けれど、この店のある一角、細い坂道がくねくねとつながっている一角には、人々が肩を寄せ合うように店々が軒を並べる、懐かしい風情が残っている。こういう店がまだ、残っている。出会えたことは幸運というしかない。 町田で飲むなら、あそこへ行こう。そう思える店を、手に入れたのだから。

町田で飲むならココ、と思える店を手に入れた幸運

(※2021年1月20日取材。撮影のため特別にマスクとパーテーションを外していただきました。)

取材・文:大竹 聡 撮影:須貝智行

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