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100軒マラソン File No.48

鹿児島直送の鶏、豚、魚、なにを食べても美味い店

「さつま料理 かご」

公開日:

さつま料理 かご でも、「赤星★巡り」キャンペーンを実施中!

 

JR新橋駅の烏森口からほど近い飲み屋密集地帯に、一軒の素晴らしい店を発見しました。

「さつま料理 かご」。四辻の角の2階にある店で、目立たないし、入り口なども小ぢんまりしているのですが、入ってみて、いろいろと驚かされるお店です。そしてこの連載でお邪魔をするわけだから、当然、サッポロラガービール“赤星”を置いている。

鹿児島直送の鶏、豚、魚、なにを食べても美味い店

ご主人の名前は上水流洋さん。かみづるひろしさんと読む。ひろしさんはよくある名前だけれど、かみづるさんは、珍しい。鹿児島県のご出身だそうです。

鹿児島商工高校(現在の樟南高校)時代には、甲子園のマウンドを踏んだ野球選手で、1972年、ドラフト3位でヤクルトアトムズ(現在のスワローズ)に入団。投手としてプロの飯を喰ってきたという、筋金入りなのです。

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「入団した時は、三原監督(名将と謳われる三原脩氏)でしたね」

1954(昭和29)年の早生まれだから、同期は1953(昭和28)年組。

「中畑、真弓、梨田、落合、田尾など、監督になった人も多い期ですね」

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中畑氏はDeNAベイスターズ、真弓氏は阪神タイガース、梨田氏は近鉄バファローズと日本ハムファイターズと楽天ゴールデンイーグルス、落合氏は中日ドラゴンズ、そして田尾氏は楽天ゴールデンイーグルスの監督を務めた人々。まさに、キラ星の世代なのだが、「かご」のご主人もその人たちと一緒に、プロの世界を生き抜いてきた人なのだ。

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■鹿児島から取り寄せる本物の味

最初の赤星を出してくださりながら、店に飾ってある2001年のスワローズのセ・リーグ優勝時の写真を見て、にこりと笑う。こちらも写真を見て、ああ、すごいなあと、ため息が出ました。

古田、宮本、真中、稲葉、土橋、ラミレス、池山、岩村、石井(一)、高津などなど。豪勢のひと言に尽きる。ご主人の上水流さんは、このとき、6年の現役生活に続く19年間のコーチ生活という、長いプロ野球人生を終えたところだったということです。

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そんなことを話しながら、最初のおつまみを出してくれた。

「鹿児島から空輸しているキビナゴです」

見るからにぷりぷりのキビナゴの刺身が、ご主人の出した皿の上で輝いている。添えてあるのは、イモガラ。皮を向いて水にさらしたサトイモの茎だという。

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私個人の経験上、キビナゴの刺身は、都内ではなかなかお目にかかれない。鮮度が命だし、足が速いから、扱うのは簡単じゃないのだろう。けれどこの店では昨日鹿児島の海で揚がったキビナゴが今日には新橋の卓上に上るわけだから、なにしろ新鮮。苦みもなく、たいへんうまい。ビールとの相性には、文句のつけようもない。

鹿児島県の西の海に浮かぶ甑島ではキビナゴは年中獲れるという。それを酢味噌でいただく。この味わいを楽しみに通ってくるお客さんも多いという。

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2品目が来ましたよ。今度はさつま揚げです。

「これも鹿児島からすり身を取り寄せて、そこにタマネギを加えてから揚げるんです。さっき揚がったばかりのがこれです。そうそう、これはやっぱり鹿児島の甘い醤油で食べてみてください」

鹿児島直送の鶏、豚、魚、なにを食べても美味い店

揚げたばかりのさつま揚げ。これって、かなりのぜいたく品だと思いますよ。表面がかりっとしていて、歯ごたえがいい。ということが、まだ口に入れる前、皿にもられたさつま揚げを見ただけでわかる。唾液が出てきます。

素朴な一品だが、深い味わいがある。甘みもうま味もある。歯ごたえがよく、魚のすり身は香りも豊かだ。

鹿児島直送の鶏、豚、魚、なにを食べても美味い店

「鹿児島でも、いろいろなさつま揚げがあります。イワシ系は黒みがかっていて少し硬いし、白身魚系のさつま揚げはふわっとして柔らかい。加える野菜も甘さもつくる場所によって異なりますが、それでも、基本は魚のうま味です」

「かご」のさつま揚げは、揚げる前に混ぜ込んだタマネギの甘みも加わるからか、全体に爽快な感じがして、口当たりも軽く、上品な旨味がひろがる。イワシ系や、シイラなどの白身系も含めて4~5種類の魚を材料にした新鮮なすり身を、これまた鹿児島から取り寄せて、こちらで仕上げるのだという。

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■経験したことのない旨さ

ビールをもう1本、いただきましょう。

続きまして卓上に登場するのは、早くも主役中の主役。地鶏の刺身の盛り合わせです。

「レバ、ハツ、砂ギモはごま油で、モモ刺しは甘口の醤油にニンニクとショウガをといて、召し上がってください」

鹿児島直送の鶏、豚、魚、なにを食べても美味い店

これは常連さんたちの間で、取り合いになるくらいの人気のひと皿。ご主人のご実家の近くから送られてくる薩摩の地鶏で、4点盛りとなると、1日に5皿から10皿しか用意できないという希少品だ。

とくに、ハツ、レバ、砂ギモは1羽からとれる量も少ないから、すぐになくなる。だから、4点盛りの皿を、ということになると、残念、品切れということもあるということなのです。

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では、さっそく、レバからいただきましょう。ごま油にちょっとつけて口へ入れてみる。だらりと溶けてしまうのではなく、サクッとした食感があって、即座に甘みが広がる。だらりとした溶け方はせず、すっきりとしていて、いかにも鮮度のよさを感じさせる。いや、鮮度だけじゃなくて、これは地鶏の旨さだ。

続けざまにハツをいただく。鶏の心臓だから量が多く取れるわけもなく、貴重なのだと言い聞かせながら口へ入れてしばらく後、ああ、とため息が出た。血の臭さがまるでない。

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ごま油で食べるのが2品続いたから、次は目先を変える意味でもモモの刺しを試してみたい。見るからに、うまそうな、地鶏のモモ肉。たまりませんなあ、と誰にともなく呟いて、甘い醤油にちょいとつけて食べる。

鶏のモモ肉にあるうま味たっぷりの脂分と、甘めの醤油の相性がいい。これも、あまり経験したことのなかった旨さ。ビールにも焼酎にも、最適の食材かと思う。

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さあ、4点が盛られた地鶏の刺し盛りの最後に試すのが、砂ギモだ。

ころころの歯ごたえ抜群、という見栄えではないんですな。薄く削いである。まさに、刺身。これは火を通さず、生でいただく。

正直、これには驚きました。しゃきっとした歯ごたえはあるが、コリコリの抵抗感とはまるで違うし、とろりと溶けてなくなるという脂でもない。ごま油をくぐらせて香りと丸みを帯びた砂ギモを噛むと、実に爽快だし、一方でなかなか複雑な味わいが広がっていく。

鹿児島直送の鶏、豚、魚、なにを食べても美味い店

「この砂ギモ、初めてですよ。ご主人は昔からこういう鶏に馴染んできたんですね」

私の問いに、ご主人はまたにこりと笑う。

「うちの実家では、何かの祝い事があるときなどは鶏を潰して料理しました。だから、子供の頃から食べていましたね。うまいですよ。うまいですけど、いつも餌をやっていた鶏をある日潰して、毛をむしって、料理して食べてしまうのですから、それはちょっと複雑な気分だったかな(笑)」

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■出てくるものが、みんな、うまい

穏やかな表情は飲み屋のご主人のものだが、体つきを改めて眺めると、やはり元プロ野球選手。がっしりとして、力強い。

2001年のセ・リーグ優勝を最後に、プロ野球の世界を去ったご主人は、この場所で薩摩料理を出していた同郷の先達の跡を継ぐ形で、飲食店経営の世界に飛び込んだ。プロ野球をやめて半年。2002年には酒場の主になっていたというから、行動も早い。

鹿児島直送の鶏、豚、魚、なにを食べても美味い店

「もともと以前の店には、私と相撲の若島津(現在の二所ノ関親方。上水流さんの高校の3年後輩)とで通っていたんですが、ある日、大将が70幾つかになって、ぼちぼち引退するから後をやらないかと。そのとき私は47歳で、もちろんこの業界は初めてだったんですが、家内も鹿児島だし、まあ、薩摩料理ならなんとかなるかと、やってみることしたんです」

店には、昔からの付き合いのメディア関係者、スワローズの後輩たち、現役選手、監督、コーチなどが今も通ってくる。そういう助けもあって、なんとかやっていますと、上水流さんは、あくまでも謙虚だ。

鹿児島直送の鶏、豚、魚、なにを食べても美味い店

しかし、このお店、出てくるもの、みんな、うまいのです。

ぐつぐつと甘くにこんだ「とんこつ」は、濃厚で甘く、白飯にぶっかけて食べたいような一品で食欲に油を注ぐし、「地鶏の煮込み」は逆に野菜と鶏のうまみをさらりと引き出した丹精な味わいが身上。これは、飽きない。

鹿児島直送の鶏、豚、魚、なにを食べても美味い店

ほかに頼んだのは、ホクホクの「にが竹の子焼き」に、鹿児島産のラッキョウの塩漬け。いずれもビールに合い、焼酎に合い、次の一皿をさらに頼みたくさせる魅力に富んだ酒肴ばかり。

鹿児島直送の鶏、豚、魚、なにを食べても美味い店

若々しい奥様との掛け合いの言葉も軽やかに、次々に来店するお客さんを、もてなす。

締めには、うどんとメシ。よく食べる編集Hさんと写真Sさんがいるとはいえ、我々もけっこうな勢いで食べ、かつ飲んできました。

鹿児島直送の鶏、豚、魚、なにを食べても美味い店

「かごうどん」は、鶏のスープに細めのうどん。具材は切ったさつま揚げとふわりとのせた玉子。鹿児島のうまさを盛り込んだ絶品うどんです。もう1品、「地鶏の炊き込みご飯は」、推して知るべし。

何を頼んでも、うまい、うまい、という言葉が漏れる店ですから、実にハッピーな締めになるのも納得です。

いいお店、知りました。この幸運に感謝して、再訪を誓うのでありました。

鹿児島直送の鶏、豚、魚、なにを食べても美味い店

取材・文:大竹 聡
撮影:須貝智行

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