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団長が行く File No.33

銀座「四季のおでん」私のおでん偏愛白書、第二章

「四季のおでん」

公開日:

今回取材に訪れたお店

四季のおでん

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あのお店はなぜ時代を超えて愛されるの? お客さんがみんな笑顔で出てくるのはどうして? 赤星探偵団の4代目団長・市川紗椰が、名店の暖簾をくぐり、左党たちを惹きつけてやまない「秘密」を探ります――。

■赤星なら永遠に飲める!?

数寄屋通り、金春通り、花椿通り、銀座ガス灯通り……。銀座の多くの通りは実に趣深い愛称で親しまれている。

花柳界で芸者衆の手配などを行う施設「見番」。新橋芸者の新橋見番が入る新橋会館ビルの前の通りは、その名も「見番通り」と呼ばれ、銀座の街の夜の顔を華やかに彩っている。

銀座「四季のおでん」私のおでん偏愛白書、第二章

その一角に建つペンシルビルの奥に「四季のおでん」はある。店名が示すとおり、四季折々の種で一年中おでんを楽しめる店だ。

おでんには目がない、というか、おでんには異常な愛情を注いできたという市川団長が、その暖簾をくぐった。一直線にカウンターが伸びるだけのすっきりとした店内。品書きは壁に並ぶおでん種のみと潔い。

銀座「四季のおでん」私のおでん偏愛白書、第二章

市川: 熱々のおでんをいただく前に、まずは冷えたビールで整えましょう。ビールをお願いします!

同店のビールは、サッポロラガービール「赤星」だけと、これまた潔く、赤星探偵団の長としてはなんとも気分がいい。

赤星の中瓶と共に店主の丸山幸二さんが「こんなもの、ご存知ですか?」と見せてくれたのは、その昔ノベルティグッズとして人気を博したアイディア栓抜き「セントル」だ。丸山さんは手持ちのセントルが壊れてからもわざわざ合羽橋で買い求め、赤星のシールを貼って愛用している。

銀座「四季のおでん」私のおでん偏愛白書、第二章

市川: へぇ~、これ栓抜きなんですか!? 上から押すだけ? やってみてもいいですか? ……ヨイショ!

カコンと栓が抜ける軽快な音が心地いい。美しいうすはりグラスにトクトクと注いで……

――いただきます!

銀座「四季のおでん」私のおでん偏愛白書、第二章

市川: くぅーー。今日も美味しいですよ、君は。ところで丸山さん、なぜ赤星一筋なんですか?

「私が好きだからです」と丸山さんは即答する。

「日本酒も火入れしてあるものに食中酒に向いているタイプが多いのですが、熱処理してあるお酒は料理と合わせて飲んでも不思議と飲み飽きしないんですよね。赤星は昔ながらの熱処理をしたラガービール。ほどよい苦味とコクがあって、どんなおでん種にも合いますし。私は赤星なら永遠に飲んでいられますよ(笑)」

市川: ははは、ご主人とは仲良くなれそうです!

さ、おでん、いかせていただきます。

銀座「四季のおでん」私のおでん偏愛白書、第二章

■出汁の旨さを堪能する関西風おでん

お通しに出されたのは豆腐だった。出汁の味をストレートに楽しめる定番のおでん種の一つ。とろろ昆布とたっぷりの分葱がなんともうれしい。

「四季のおでん」はすべての種に同じ基本の出汁を使いながら、種に合わせて最後の味付けを施し、薬味を添えて仕上げるスタイル。日本料理のお碗や炊き合わせなどの一品料理が、ずらりと勢揃いしているようなものだ。

銀座「四季のおでん」私のおでん偏愛白書、第二章

市川: あ、おいしぃ。このお出汁は飲める、というか、最後の一滴まで味わいたいです。お出汁は何でとっているんですか?

「昆布と鶏でとっています。鶏といっても使っているのはモミジのみ、鶏の脚ですね。種はそれぞれ下ごしらえをしてからこの出汁を含ませます。種の方からもいい味が出て、出汁の風味が次第に豊かになっていきます」(丸山さん)

そのお出汁を堪能するならやっぱりコレでしょ! と頼んだのが、おでん界の重鎮(?)、大根だ。

銀座「四季のおでん」私のおでん偏愛白書、第二章

市川: きゃーっ、私が知ってるおでんの大根と違う! 上にのってる削り節のなんと繊細なこと。上品な佇まいですね。

(一口食べて)はい、サイコー、お出汁の塊です。食べる点滴。もうお出汁が私のカラダの一部になりました。

続いて、季節の一品、牡蠣。大ぶりの牡蠣の身を出汁にさっと潜らせ、鰹節や昆布、椎茸、いりこなどを漬け込んだ手作り出汁醤油をちょいとかけたら完成。

銀座「四季のおでん」私のおでん偏愛白書、第二章

市川: あぁ、そういうことだったんだ。牡蠣のおでんって。もうこんなの美味しいに決まってるじゃないですか。

……ほらっ、美味しい! やっぱり美味しいもん!(瞬殺)

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牡蠣と同じように、束の間の出汁エントリーという通過儀礼を経た湯葉がやってきた。

銀座「四季のおでん」私のおでん偏愛白書、第二章

市川: ……(ため息)。おいしすぎる。世の中の湯葉がみんなコレだったらいいのに。

あまりにも強烈なおでん体験に、団長の言動も迷走し始めてきた。

銀座「四季のおでん」私のおでん偏愛白書、第二章

■役者揃いのおでんたち

「四季のおでん」は関西風おでんの店だ。丸山さんは関西屈指の名料亭での修業ののち、元々は大阪にあった「四季のおでん」の本店に入った。その後、東京への出店を任され、オーナーが引退して大阪の店を閉めた後もこの銀座店を引き継ぎ、現在も本店の味を頑なに守っている。

銀座「四季のおでん」私のおでん偏愛白書、第二章

出汁に鶏のエキスを加え、牛すじや鯨などの動物系の種が入るのも関西風の特徴で、きくな(春菊)や小芋(里芋)、ひろうす(飛龍頭と書く。がんもどき)など関西ではお馴染みの呼び名を使っているのも、ルーツが大阪にあるためだ。

せっかくだから関西ならではの種をと団長が頼んだのが、さえずり。鯨の舌だ。

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市川: これが噂に聞いていたさえずりですね。初体験です。

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……おっ、予想の斜め上をゆく食感! このキメの細かい繊維質にお出汁がたっぷりと染み込んで、なるほどこれはおでんにうってつけの種ですね。

カニも見逃せない季節限定の種。そのエレガントな姿に団長はノックアウト寸前。震える手でぷりぷりのカニ肉を口に運ぶ。

銀座「四季のおでん」私のおでん偏愛白書、第二章

市川: 生姜の風味でカニの甘さが引き立てられていて……もう悔しいくらい美味しいです!

そして、心をわしづかみにされたのが玉子。4つに切られて並ぶ姿の可愛らしいこと、黄身と白身のコントラストが美しいこと、この上なし。団長はもはや笑顔で食べ続けるのみ、になっている。

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■コンビニおでんが好き過ぎて……

団長はかつて、コンビニのおでんにハマっていた時期があるという。好きなモノ・コトへの偏愛っぷりはただならぬものがあるが、おでんに関してもその性質はいかんなく発揮された。

銀座「四季のおでん」私のおでん偏愛白書、第二章

市川: おでんって、子どもに不人気だけど大人は大好きな食べ物の代表ですよね。主食なのかおかずなのかよく分からないってところが子ども時分には受け入れ難いんですけど、大人になると食事として、おつまみとして、はたまたおやつとして、気分に合わせて味わえるっていう、唯一無二のジャンルじゃないですか。

今でこそコンビニも健康志向になっていますが、昔は炭水化物とジャンクなものがほとんどでした。そんな中で、レジ前のおでん鍋は私にヘルシーでありたいという自我を呼び覚ましてくれる泉だったんです。

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いつも行きつけのコンビニで一度に10個くらいのおでんを買っていました。その内訳は大根7、こんにゃく2、玉子1というように偏ったものだったので、目立つ存在だったようです。加えて、オフシーズンにも来店のたびに店員さんに「おでんはいつ始まりますか?」って質問していたので、かなりウザい客だったと思います。

ある日、中国語を話せる友人とそのコンビニへ行くと、友人は怪訝そうに「あなた、おでんで何かしでかした?」と聞いてきました。理由を聞くと、そのコンビニの中国人の店員さん同士が私のことを見て中国語で「おでんの子が来た」と話しているから、とのこと。思い当たるフシ、ありまくりです(笑)。

私は自分でも気付かないうちに “おでんの子” の称号を得るにふさわしい、おでんLOVERになっていたのです。

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■新たな1ページが加わった瞬間

おでんの子・市川紗椰は、品書きにある違和感を覚えた。「ちくわぶ」の文字があるからだ。ちくわぶ(竹輪麩)は小麦粉をこねて茹でた言わば超極太の麺で、関東のおでんでは定番の種だが、好みが大きく分かれるクセモノ。

関西人にすこぶる評判の悪いおでん種として知られ、互いの食文化をディスり合いが勃発した際には、関西人からしばしば「“ちくわ”なん? “ふ”なん? 一体なんやねん!」と槍玉に挙げられる存在だ。

銀座「四季のおでん」私のおでん偏愛白書、第二章

そんなちくわぶがラインナップされた経緯について聞くと……。

「関東ではやっぱりちくわぶを食べたいという声が多いんですよ。東京に出店して10年経った2011年に、そろそろ関東の文化を採り入れてもいいだろうと、思い切って出すようになりました。確かにちくわぶに否定的な声もありますが、うちでは関西の方でも結構召し上がる方いらっしゃいますよ。食べてみたら案外イケるね、と肯定派になる方もちらほら」(丸山さん)

ならばと、普段はちくわぶを食べることはないと言う団長も頼んでみた。やってきたのは、厚さ10mmに満たない輪切りの3片。真っ白だったであろう表面は、出汁を吸い込んでいい具合の飴色になっている。

銀座「四季のおでん」私のおでん偏愛白書、第二章

市川:(ちくわぶをじっくり噛みしめながら)なるほど、そういうことだったのかあ……。ちくわぶ、アリです。いや、素晴らしい。いいお出汁で煮込まれたちくわぶをいただくと、おでん種としての存在意義がはっきり分かります。

ちくわぶはその店のおでん観を映し出す真っ白いキャンバス。お出汁の美味しさを伝える最高のメッセンジャー。そして、このなんとも言えない曖昧な食感……。主食っぽいけど、(赤星を一口飲んで)意外とお酒との相性もいい。

団長のおでん種ランキングが、ちくわぶの劇的な急上昇を見せたところで、今宵のおでんの宴はそろそろお開き。「四季茶漬け」で〆ることにする。

銀座「四季のおでん」私のおでん偏愛白書、第二章

茶漬けといっても、熱々のごはんの上に白身のづけをのせ、おでんの出汁をたっぷりと注いだもの。この日の魚は真鯛。いわゆる鯛茶漬けのおでん出汁バージョンだ。

銀座「四季のおでん」私のおでん偏愛白書、第二章

予想外のラスボスの登場に、驚愕&歓喜するおでんの子。

市川: は~、美味しい~。私のおでん偏愛白書に新たな1ページが加わった瞬間だわ。これなら永遠に食べられそう。

まだまだ気になる種がいっぱい残っていますが、それはまた次回以降のお楽しみとしてとっておきます。コンプリートを目指してまた必ず寄らせてもらいます!

銀座「四季のおでん」私のおでん偏愛白書、第二章

――ごちそうさまでした!

撮影:峯 竜也
構成:渡辺 高
ヘア&メイク:千葉万理子(Pernanent)
スタイリング:西野メンコ
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