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団長が行く File No.36

新橋「お多幸」関東風まっ黒おでんは〆まで完璧

「新橋 お多幸」

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あのお店はなぜ時代を超えて愛されるの? お客さんがみんな笑顔で出てくるのはどうして? 赤星探偵団の5代目団長・宇賀なつみさんが、名店の暖簾をくぐり、左党たちを惹きつけてやまない「秘密」を探ります――。 (※撮影時以外はマスクを着用の上、感染症対策を実施しております)

■オトナはおでんの旨さを知っている

いったい、何歳くらいから、なのだろう。人が「おでん」という3文字の響きに心ときめくようになるのはーー。

晩ごはんがおでんだと知った時にガッカリする小学生はおよそ9割。歳を重ねるとその失望は悦びへと180度変わっていき、酒を嗜む年齢になると「今夜はおでんですか、こいつは一杯も楽しみだねえ」と、およそ9割がおでん愛好家になっている(赤星探偵団調べ)。

新橋「お多幸」関東風まっ黒おでんは〆まで完璧

子どもの頃は夕飯がおでんだと「手抜きされたような気がした」と笑う宇賀団長も今は、おでんがどんなに手間のかかる料理かを知っているし、おでん種を頭の中で並べただけでウキウキするほど、おでんリテラシーは格段に向上した。老舗のおでん専門店「新橋 お多幸」へ伺うために、昨夜の晩酌は控えめにしたという。おでんに真摯に向き合うために、だ。

出汁と醤油の香りが漂うカウンターは、屋号よろしくすでに多幸感に満ちている。フツ、フツと煮えるおでんの大鍋を前に、キンッ、キンッに冷えた赤星、我らがサッポロラガービールで喉を潤そう。

――いただきます!

新橋「お多幸」関東風まっ黒おでんは〆まで完璧

宇賀: ああ、おいしぃ。大瓶ってところが、またいいですよね。手酌する時にどっしりと重量感があって、瓶ビール飲んでるぞっていう実感がすごいの。

さて、クールダウン完了。アツアツのおでんをいただく準備が整いました。さあさあ、何からいきましょう。まずは、いちばん好きな大根。それから……牛すじに、ねぎま!

それにしても、お出汁の色が特徴的。こんなに黒いお出汁は初めてかも。どんなお味なのか楽しみ。

新橋「お多幸」関東風まっ黒おでんは〆まで完璧

■自分史上最高の大根に出会ってしまった

注文を受けて、ねぎまが鍋に投入された。10分ほど静かに煮込んだところで食べごろとなる。大根は下茹でのあと、大鍋で3時間ほど煮たものが選ばれる。牛すじは専用の別鍋からお出ましだ。

宇賀: おぉー、いい色! 大根の浅黒い肌の艶やかで美しいこと。そして、牛すじは私の知っている牛すじと違う!

まずは大根からいきますね。箸がすっと入る柔らかさなのに、形はしっかり。面取りしていないエッジまでピンッと立って勇ましい。

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宇賀: えっ!? 見た目とは違って全然濃くない。むしろ、関西の薄い色のおでんよりも塩味がやさしくて、お醤油の風味がとっても上品です。

(もう一口食べて)……うん、自分史上最高の大根に出会ってしまいました! 大根ってこんなにおいしい食べ物だったんですね。お多幸さん、すごい。ありがとうございます。

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おでんの大鍋を任されている店長の押元勝清さんが、自慢のお出汁について教えてくれた。

「うちのおでんは醤油の風味を生かした濃口。醤油に負けないように、カツオ節ではなくより旨みの強いサバ節と、日高昆布を使って出汁をとっています。昔は確かにかなり甘じょっぱい味だったようですが、昭和30年代から徐々に時代に合わせて味付け自体は薄くなってきたようです。

初めてのお客様には、つゆの色を見てギョッとされる方もいらっしゃいます。でも、召し上がると意外にあっさりしていて驚かれることも多いのです」

新橋「お多幸」関東風まっ黒おでんは〆まで完璧

この「新橋お多幸」は、ホールを仕切る三代目社長・柿野幹成さんのおじいさんが銀座の「お多幸」で修行した後、昭和7年、のれん分けによって新橋1丁目に創業した店だ。再開発などにより2度の移転を経て、平成20年から新橋3丁目の当地で営業している。戦争により営業が途切れた時期もあるが、この黒光りするようなつゆは、70年以上継ぎ足しながら大切に育ててきた。

宇賀: 長年いろんな種から出た旨みも、大根にしみ込んでいる。だからこんなにおいしいんだろうなあ。牛すじもいただきます。大きいけど、豪快に行っちゃえ…

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……ぷりぷりのむっちむちで、これ、コラーゲンのかたまり! こちらもお出汁がしみしみで、めちゃくちゃおいしいです。でも、牛すじって、普通、もっとひらひらして、肉っぽい感じもあるものですよね?

「牛のいろんな部位のすじを集めて使う店が多いですよね。うちの牛すじはアキレス腱だけ。5時間下茹でをして、別の鍋でじっくり1時間ほど煮込みます。もともと牛すじは関西のおでんの種。関西では牛すじやクジラなど動物系の種も一緒に煮込みますが、関東では伝統的には動物系の種は入りませんでした。時代に合わせて、うちでも30年くらい前から牛すじも出すようになりましたが、同じ出汁を使いながら、鍋は別にしています」(押元さん)

宇賀: へえ〜。関東では定番のちくわぶも関西にはない種だそうですね。おでんって意外と地域性があっておもしろい。

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■ねぎまに小松菜、おでん種、百花繚乱!

ねぎまがそろそろ頃合いのようだ。串に刺さったあの形ではあるが、ネギと鶏肉ではない。

江戸時代、マグロは赤身が重宝され、脂の多いトロ部分は保存が効かないこともあって敬遠された。そのトロ部分をおいしく食べる料理として庶民に広がったのが、ネギとマグロを醤油味の出汁で煮るねぎま鍋。同店のねぎまは、そのおでんバージョンだ。

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宇賀: からしでも七味でもなく、山椒をかけるのがおすすめなんですか。どれどれ……

はふ、ほっ。おいひいっ! マグロは火の入り具合が絶妙でしっとりなめらか。ネギはお出汁がしみしみで、でもシャキシャキと小気味いい食感。これは、赤星と合うでしょ、絶対。(グラスを傾け)はい、間違いない(笑)。

「赤星は味わいがしっかりしているから、どんな料理にも合います。お客さんから赤星を入れてほしいという声が多く、従業員にも赤星のファンが多かったのでうちでも出すようになりました。甘辛なおでんの味ともよく合って、人気ですよ」(押元さん)

「新橋お多幸」が使う種は、練り物は日本橋「神茂」、豆腐・がんもは人形町「双葉商店」、こんにゃくは御徒町「大原本店」からと、老舗からの厳選素材が揃う。野菜も鮮度抜群の一級品だ。

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団長が旬の小松菜を注文すると、油揚げでぎゅっと裏巻きされた小松菜が鍋に投じられた。これからつゆで温め、軽く味を入れる程度に煮込むという。

押元さんは大鍋に付きっきりで、多彩な種のお世話をしている。小松菜のように注文を受けてからさっと煮上げるものもあれば、1時間以上煮込んで仕上げるものもある。客の入り具合を見ながら、注文を先読みして種を投じていき、同じ鍋でも場所によって異なる火加減をうまく使い分けながら、ちょうどいい状態で提供していく。

新橋「お多幸」関東風まっ黒おでんは〆まで完璧

団長は巻かれていた小松菜を解体し、一片ずつ口に運んではシャクシャクとした味わい、赤星とのマリアージュを楽しむ。

宇賀: いろんな種が鍋に入って、色が変わって去っていく。この様子を静かに眺めているだけで、お酒がどんどん進んじゃう(笑)。

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■恍惚のじゃがいも、やすらぎの半熟めし

宇賀: さ、おでん、どんどん行きますよ。それじゃ……。

団長がこの日のメインディッシュに選んだのは、豚肉の餡をくるんだキャベツ巻き、はんぺん、じゃがいものトリオ。肉・魚・野菜をバランスよく盛り込んだ、名付けて「宇賀盛り」だ。

まずはキャベツ巻きからハフハフと夢中な団長。赤星大瓶は空になり、麦焼酎のロックに切り替えた。淡雪のごとく柔らかなはんぺんをガブリとやって「んーーー!」と目を丸くしている。おいしすぎて、もはや無言。

新橋「お多幸」関東風まっ黒おでんは〆まで完璧

そしてこの日、団長のおでん史に新たな1ページを刻み込んだのは、思わぬ伏兵じゃがいもだった。

宇賀: おいしすぎる……。じゃがいも自体の甘味とこちらのお出汁との相性が抜群。中まで味がしみていて、ほっくり、こっくり。最高すぎる。

大根もそうだけど、一流のおでん屋さんでは、食べ慣れた種でこそ、技術のすごさがわかるような気がします。もちろんどれも絶品だったけれども、大根とじゃがいもに、今日は心をわしづかみにされました。

新橋「お多幸」関東風まっ黒おでんは〆まで完璧

さて、〆である。

おでんの〆といえは茶飯が定番だが、手元の皿に残ったタネと合わせるもよし、お好みのタネを追加して乗っけるもよし、余韻を楽しみながらご飯だけをいただくもよし、その日その時の気分次第、締めくくり方は自由である。

団長は正面の壁をじっと見つめながら、押元さんにこうつぶやいた。「〆のお食事にアレいただけますか?」「はい、半熟めしですね」。阿吽の呼吸で注文が通る。ほどなく登場したのは、亜麻色に染まったごはんに二つに割られた半熟の煮玉子が乗った、別腹必至の一品だ。

新橋「お多幸」関東風まっ黒おでんは〆まで完璧

宇賀: やったー。ここに座った時からずっと壁の写真が目に入っていて、今日は絶対これで〆るって決めてたの。限定20食って書いてあるけど、私が一番乗りですね。シリアルナンバー「1/20」いただきます……。

お、ごはんは固めで粒が立ってます。うーん、口の中でお出汁の香りがふわっと広がって、おいしい! ここに玉子の黄身を絡めていくわけですね。これはクセになりそう。

新橋「お多幸」関東風まっ黒おでんは〆まで完璧

「昔はせっかちなお客さんが多くて、終電間際に入って来ては、お酒をキューっと煽りながら『茶飯と○○一緒にちょうだい』って言って、玉子や豆腐やがんもなんかをガガッと崩してかき込んでいくわけです。もともとは賄いの食べ方なんですが、今では多くの方が〆にこうやって召し上がるようになりました。それならということで、うちではもう一仕事、おでんとは別に半熟の煮玉子を作っておいて、こうして限定でお出ししているんです」(押元さん)

宇賀: もう、完璧です。「新橋 お多幸」さんには、みんなに愛され続けてきた味がいっぱい。もうお腹パンパンなのに、蛸も食べたかった、豆腐も食べたかった、ちくわぶも食べたかったと後ろ髪を引かれる思いです。再訪のモチベーションはすでに満タン。また絶対、来ますね、近いうちに。

新橋「お多幸」関東風まっ黒おでんは〆まで完璧

――ごちそうさまでした!

(2021年1月22日取材)

撮影:峯 竜也
構成:渡辺 高
ヘア&メイク:ATELIER KAUNALOA
スタイリング:近藤和貴子
衣装協力/&.NOSTALGIA(トップス¥2,900)
CELFORD/CELFORD ルミネ新宿1店(スカート¥19,000)
ete(リング¥11,000),jouete(イヤカフ¥17,000リング¥10,000)
ダイアナ/ダイアナ 銀座本店(ブーツ¥23,000)

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