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団長が行く File No.35

茅場町「とり健 本店」幸せは串に刺さってやってくる

「とり健 本店」

公開日:

あのお店はなぜ時代を超えて愛されるの? お客さんがみんな笑顔で出てくるのはどうして? 赤星探偵団の5代目団長・宇賀なつみさんが、名店の暖簾をくぐり、左党たちを惹きつけてやまない「秘密」を探ります――。 (※撮影時以外はマスクを着用の上、感染症対策を実施しております)

■いちばん好きな食べ物は

茅場町駅からほど近い、とある裏路地。昭和20年代に建てられたという民家から、ほんのりと、なんとも食欲をそそる香りが漂ってくる。 引き戸をガラリと開けると、目の前に炭火の焼き台とカウンター。ここは「とり健 本店」。焼き鳥店が密集する茅場町界隈でも、屈指の人気店だ。

茅場町「とり健 本店」幸せは串に刺さってやってくる

焼き台に立つご主人、幸田篤さんと相対するように、カウンター席に落ち着いた宇賀団長。すでに炭火は煌々といい具合。団長の目も爛々と輝いている。 宇賀: じつは、食べ物の中でいちばん好きなのが焼き鳥なんです。もう数日前からウキウキしちゃって(笑)。なにはともあれ、まずはビールですね。サッポロラガーをください!

茅場町「とり健 本店」幸せは串に刺さってやってくる

宇賀: いただっきまーす。く~~。キミはいつもおいしいね。 焼き鳥って、その瞬間瞬間に食べたいものを頼んで、焼きたてをパクッといけるところがいいですよね。今夜の注文はどう組み立てていこうかな、なんて考えながら、こうしてビールを飲む段階からたまらなくて……。 まず、きゃべつと大根おろしをお願いします。

茅場町「とり健 本店」幸せは串に刺さってやってくる

■強火の直火で一気に焼き上げる

新鮮な生キャベツと大根おろし、キンキンに冷えた赤星が手元に揃ったところで、熱々の焼き鳥をお迎えする準備は万端整った。 第一弾オーダーは、はつもと、はらみ、ししとう、椎茸の “じく”だ。

茅場町「とり健 本店」幸せは串に刺さってやってくる

「とり健 本店」の焼き鳥は、火力と火持ちが抜群とされる紀州備長炭を使って、強火の直火で一気に焼き上げるスタイル。幸田さんが、絶妙な火加減と秒単位の火入れ具合によって、鶏のさまざまな部位の持ち味を最大限に引き出してくれる。 塩かタレかの味付けは、部位によって決まっている。

茅場町「とり健 本店」幸せは串に刺さってやってくる

早速、はらみ、そして、はつもとがやってきた。共に塩味。

茅場町「とり健 本店」幸せは串に刺さってやってくる

宇賀:(はらみを頬張って)おぉー、この食感。なんて柔らかくてジューシーなんでしょう。すんごい旨み。赤星が合うなあ。 はつもとは……こちらも、旨みがぎゅっと詰まっていて、おいしい! 今までに食べたはつもとの中でダントツ一番かも。

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「ありがとうございます。はつもとがお好きというのはかなりのツウですね。まず普通はご存じない部位ですから。ハツ(心臓)の根元の部分で、その串1本で15羽分くらい必要なレアメニューです。毎日、早い者勝ちでなくなりますから、真っ先に頼むとはお目が高い」と幸田さん。 宇賀: ハツモトって、ハツよりもハツっぽくて好きなんです。って、言ってること、意味不明ですよね(笑)。 ところでご主人、前から気になっていたんですけれど、焼き鳥って、串の下の方についているお肉は、女性の場合、どうやって食べるのがいんでしょう?

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「もちろんお客さんの自由ではあります。ただ私としては、最後まで外さずにかぶりついていただくのをおすすめしたいですね。なんといってもそれが焼き鳥の醍醐味ですから。女性であっても、ほっぺに串の跡が付くくらい豪快に召し上がっていただけるとうれしいです」(幸田さん)

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宇賀: やっぱり!! かぶりつくとおいしさが違いますよね。そもそもすごい手間をかけて串に刺していただいているのに、それをお箸で外ししまうのってちょっと気がひけるところがあって……。よしっ、このままいっちゃう。 ありがとうございます。長年の焼き鳥問題が解決しました!

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■ツヤッツヤ、プルップルのレバーに驚愕

強火でしっかり焼き目をつけたししとうは、仄かな辛みを残しつつ、噛むほどに素材の甘味がじわじわと押し寄せる、安定の名脇役。団長はこれを肉の合間に一房ずつ噛み締めて、舌をリセットする作戦に。

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椎茸の“じく”とは、その名の通り、椎茸の太い軸だけを集めた串焼きだ。椎茸の旨みがジュワッと沁み出す。 宇賀: え!? 何これ! 噛んだ時の香りがものすごいです。松茸っぽい。いや、松茸にも負けてない。あーー、今まで椎茸のこの部分、捨ててましたよ。私ったら。反省。

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第二弾オーダーは、レバー&ささみのコンビ。当店でも1、2を争う人気メニューだ。どちらも、煌々と立ち上がる炎でサッと炙り、表面の色が変わったかな、という程度の火入れ具合。 宇賀: このレバー、見て。タレをまとってツヤッツヤ! そしてプルップル!! いざ……。

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んーーこれは、なんと滑らかで、味わい深いことか。臭み、一切なし。サイコーです。おいしすぎる。そして、ビールが進み過ぎる。 焼き鳥屋さんのキャベツはチェイサーだと思ってるんですけど、こちらのキャベツの横に付いてる自家製の合わせ味噌がおいしくて、やっぱりビールが進んじゃう。

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(ささみを頬張り、遠くを見つめ)これまた、上品なおいしさ。タレ代表のレバーと、その向こうを張る塩代表のささみ。今日の勝負、ドローで両者優勝です! 店内のBGMは音楽好きの幸田さんが自分で編集した邦楽メドレー。80年代のポップス、ニューミュージックのヒット曲が中心だ。懐かしい音楽に耳を傾け、焼き鳥と向き合う焼き台前のカウンターは、まさにアリーナ席だ。

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団長がいつのまにか注文していたごま塩レバは、極上のレバーを、さっと炙ってごま油と塩でシンプルに味付けした、隠れた人気メニュー。レバー本来の甘みが際立つ絶品で、タレのレバーと甲乙つけがたい。 箸が進み、グラスを傾けるピッチも上がってきた。団長、ゾーンに入った。

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ここでビールから日本酒、秋田の樽酒へスイッチ。檜樽でじっくり寝かされた日本酒が、正一合枡になみなみと注がれ、そして、受け皿にたっぷりとこぼされた。そこでかかった曲は……。

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宇賀: 『川の流れのように』ですか。枡の上の小さなさざなみを見つめている時に、これ以上ないBGMですね。 あ、おいしい。樽の木の香りがふわりと感じられて。焼き鳥って、もちろんビールと合うけれど、日本酒もいいんですよねぇ。ああ、今日も幸せだなあ。

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■局アナ時代の私は焼き鳥でできていた

つくねがやってきた。おすすめは? という団長に、幸田さんが送り込んだタレの刺客だ。ちょっと変わっているらしい。

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宇賀: えっ? ふわっふわ。山芋が練り込んであるんですね。ナツメグがきいていて、なるほど、これは必食の1本かも。やられました。

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「いい食べっぷり、飲みっぷりですね。どうして焼き鳥がお好きなんですか?」と幸田さん。 宇賀: 局アナ時代は、生活がとても不規則で、友達とご飯を食べる時間がなかなか合わなくて、でもちょっと飲みたいなという時に、ちょうどいいのが焼き鳥屋さんだったんです。ひとりでも居心地がいいし、お肉も、お野菜も、いろんなものをちょっとずつ、自分のペースでいただけるし。だから、おしゃれな高級店にありがちな、コースだけのお店はちょっと苦手で……。 早朝の番組を担当していた時は、いつも夕方の早い時間から焼き鳥屋さんで一杯。あの頃は、身体のほとんどが焼き鳥でできてたんじゃないかな(笑)。

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「うれしいですね。自分も食べ物の中で焼き鳥が特に好きで、それでこうして焼き鳥屋になりましたから。ビールも昔からサッポロが好き。カウンターの中から、自分の焼き鳥を喜んでもらえて、赤星をグビッとやっている姿を見ると、こちらも幸せな気分になります」(幸田さん)

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団長は、シメに煮込みを注文した。 「とり健 本店」の煮込みに使う鶏は一般的に背肝と呼ばれる副腎のみ。それを大根とゴボウ 、こんにゃく、豆腐と一緒に炊き上げ、白味噌と赤味噌の合わせ味噌、韓国の調味料・ヤンニョンで味付けした、ピリ辛味噌味。オープンから20年、継ぎ足し継ぎ足ししながらつないできた伝統の味だ。

茅場町「とり健 本店」幸せは串に刺さってやってくる

宇賀: 背肝やゴボウからいいお出汁が出ていて、見た目ほど濃くもなく、そこまで辛くもなく、ちょーどいいお味ですね。ほっとします。 私にとって、焼き鳥屋さんの煮込みは、和食屋さんの赤だしのようなもの。必ず最後にいただきながら考えるんです。今日も幸せな1日だったな。明日も幸せな1日になるといいな、って。

茅場町「とり健 本店」幸せは串に刺さってやってくる

私の焼き鳥リストに、「とり健 本店」という大事な大事な1軒が加わりました。こっち方面で夕方に終わるような仕事があったときには、また必ず寄らせていただきますね。 ――ごちそうさまでした! (※2020年12月18日取材)

撮影:峯 竜也 構成:渡辺 高 ヘア&メイク:ATELIER KAUNALOA スタイリング:近藤和貴子 衣装協力/LOUNIE(アンサンブルニット¥26,000,ニットパンツ¥16,000) プラス ヴァンドーム/プラス ヴァンドーム そごう横浜店(イヤリング¥9,000) jouete(リング¥10,000) ダイアナ/ダイアナ 銀座本店(ブーツ¥23,500)

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