昭和なアニキが語る定番服と赤星の名店「アニ散歩」
とよかつ

<7本目>

ブルックス ブラザーズのBDシャツと「とよかつ」のまくら

男には、どうでもいい事にこだわる美学もある。このブルックス ブラザーズのBDシャツは、裾出し専用として丈を3cm詰めている。俺にとっては、この3cmがマイ・スタンダードなバランスなのだ。ちなみにパンツイン専用の丈はそのまま。コーディネートにより使い分けている。

裾出しの時は、チノパンにコンバースで気負いせずにサラッと。これくらいシンプルな方が、着る人のキャラクターが出るもの。大切なのは洋服ではなく中身ということだ。

さて今回赤星を探しにブラブラ向かったのは恵比寿。もっともよく飲む街で、なぜか落ち着く。そんな恵比寿の中で最古の昭和酒場と呼ばれる「とよかつ」へ

駅前は再開発で進化する恵比寿だが、ここだけは時が止まっている。心地よい老舗の緊張感を感じるカウンター席のみの昭和酒場王道スタイルだ。

まずは、いつもの赤星を注文してその緊張感を楽しむ。

コップに注いだ瓶ビールの最初の一杯は、なんでこんな美味いのだろう。

店内のメニューを見て注文を考える時が楽しい。煮込みや昭和酒場のつまみは一通り揃っているようだ。

寡黙に仕込みをするご主人のオーラを感じながらカウンター上を見あげてみると……。

ヴィンテージ級に年季の入ったもつ焼きの札が!!よく見ると、横には「焼きものの追加注文は出来ません!!」。マジか??こんな店独自のルールは嫌いじゃないというかむしろ好きかも。

男の決断が試される上に右のまくらってなんだ??追加ができないので俺は考え抜き、まくらを含む4本を注文した。

ほろ酔いになったとこで、ご主人と女将さんに話しかけてみることに。焼きあがるまで、「とよかつ」の歴史を少々。

今から70年前の終戦直後の昭和21年、まだ焼野原だった恵比寿に先代の長島勝子さんはご主人の豊作さんと一緒に木造の店舗で店をはじめた。

勝子さんは戦後の激動の中、もつを焼き続け、10年前にお店から退き、今は息子さんの太市さん夫婦が引き継いでいる。店名の「とよかつ」は豊作さんと勝子さんの名前を組み合わせたものだと。

勝子さんから引き継いだ焼き場に立つ太市さんを眺めながら心地よい時が流れる。しかし焼き姿がカッコイイ。

これが、まくら。注文した4本の中で焼きあがるのに一番時間がかかるので最初に焼き始めている。

炭で焼き上げられる俺の4本。

70年の歴史を想いながら飲む赤星は格別の味だ。

先代から守り続けられている継ぎ足しのタレ。見ているだけで美味いに間違いないと確信する。

俺の4本が焼けた。左から、かしら・レバー・あぶら・まくらだ。

すでにこの美味そうなルックスを目の前に、もう少し多めに注文すればよかったと思ってしまう。

最初の1本は、かしら。さすが毎朝仕入れているだけあって鮮度の高さがやばい。これはマジで美味い。

続いてレバーとあぶら。秘伝のタレと絶妙な焼きっぷりで心からシビれる美味さだ。3本食べたところですでに追加注文したい気持ちがまたこみ上げてきた。

ラストのトリを飾るのはまくら。めちゃくちゃ美味すぎる!!豚肉をつなぎ無しで丸め崩れないようにニラを巻き付けた串焼きが超絶品。なぜまくらかと言うと仕入れた肉を首の肉と勘違いして枕と名付けてしまったらしい。常連が必ず注文する「とよかつ」の先代が考案した名物メニューだ。

先代の勝子さんは山梨のご出身なので、リスペクトを込め、山梨の赤ワインを追加注文。まくらは、ぜひ一口で食べていただきたい。口の中で焦げたニラの香ばしさと、ジューシーな豚肉の旨味が広がるのだ。

終戦の一年後に焼野原の恵比寿で商売をはじめた先代の勝子さんと豊作さんの苦労は計り知れないものだったであろう。勝子さんはまったくの素人からもつの焼き方を研究し自分の信じる道を生き抜いてきた。今「とよかつ」の味と精神は息子の太市さん夫婦が守り続けている。

いい話だなあ~と思いながらも次回は追加注文できず後悔しないように7本は注文しようと強く心に誓った夜だった。

ブルックス ブラザーズのBDシャツ。トレンドに左右されない完成されたシルエットはあらゆるコーディネートに使える。着込んでいくうちに馴染むコットン生地は袖が擦り切れても捨てることのできない相棒だ。

Text:Eiji Katano
Photo:Kou Maizawa

店舗情報

とよかつ

[住所] 東京都渋谷区恵比寿西1-3-7 アルス恵比寿メイクス1F

[TEL] 03-3461-8539

[URL] https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130302/13024498/

[営業時間]

営業時間 17:00~22:00

定休日 日・祝

【プロフィール】

片野英児(かたのえいじ)

1968年生まれ。昭和とメンズ服飾を愛してやまない47歳。小誌編集長の干場(ほしば)がアニキと呼んだことから、いつしかアダ名がアニキに。趣味は、スナックで昭和カラオケ。呑みすぎると、歌いながら、なぜか干場と泣き合う熱き男。好きな場所は軍艦島。

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