熱風を感じる猛暑が、俺をやるせなくさせる2018年夏。マイスタンダードなラコステのポロシャツは、ボタンをすべて留めて着るのが、やっぱり俺流だ。そんな夏スタイルで向かったのは世田谷。「赤星」が飲める市民酒場があるという情報を手がかりに、散歩に出ることにした。
世田谷公園は、20代の頃に三宿で飲んだ後にブラブラした思い出のスポット。
カルガモが俺の心を癒す夕暮れ。
その市民酒場は、公園裏の住宅街にあるんだとか……。食べログ未掲載の「市民酒場 ジョー」は、ネット上にほとんど情報がないのだ。
マジか? ここなのか? 家か? よく見ると暖簾には「市民酒場 ジョー」の文字が書かれている。市民酒場とは戦時中に横浜市が支援していた酒場の名称で、現存している諸星酒蔵が有名だ。しかし、ここは世田谷。謎が深まる。
一歩入ると……。何? 市民酒場というよりは暖炉があるシャレオツな空間が広がる。まるでギャラリー。白い箱馬があるし、スタジオのようでもある。奥にはミステリアスガールが? ジョーさんは女性なのか?
メロウな手書きのメニュー。この脱力感がゴイスー。
俺はカウンターに座り、謎のガールに話しかけてみた。気が向いたときだけ手伝いに来ているスタッフのリンちゃん。このグルーブ感は完全にヨコハマだ。世田谷公園の真裏から一瞬でハマにワープ!
まずは、こいつで喉を潤す。俺が俺を取り戻す瞬間。グッとくる最&高な一杯。なんか本当に探偵のような取材になってきた(笑)
厨房からいきなり現れたジョーさん。はじめまして、アニキです。そのオーラに一瞬でグッとくるバイブレーションを感じた。聞き込みを続けると、やはりヨコハマ生まれのリアルなハマっ子だったのだ。だから市民酒場ってことね。さらに、なんとフードカメラマンで、元々ここはキッチンスタジオだったとのこと。2017年9月にお店を始めたのでまだ1年も経っていない。
メニューはあるが、その日の気分で変わるということなので、ジョーさんにおまかせしてみた。リンちゃんと飲んでいると、なんだか長者町の秘密バーにいる気分になってきた。
なんてアロハが似合うのだろうか? 自由に生きてる男にしかできない着こなしだ。
まずはお刺身。鯛をポン酢で和えたシンプルな一皿。
おっウマい! ウマウマだぜ。ジョーさん!
こいつは間違い無いでしょ。アサリワイン蒸しをいただく。
ヤバい。ヤバい。プリプリッのアサリにこの出汁が出まくったスープが強烈にウマい。おそるべしクオリティだ。
目の前ではリンちゃんがワインのリンゴジュース割りを飲んでいる。紙パックがクールだ。なんか異国のスナックにいる気分。
ここでジョーさんとも乾杯! このゆるい感じがいい。ジョーさんとリンちゃん、なんて絵になる二人なんだ。
キター! 揚げワンタン! ハマ生まれ、ハマ育ちのジョーさんにとっては中華の定番でもある。本牧の奇珍でも必ず食べる俺の大好物。
強烈にウマい!イイネ!イイネ!イイイネッ気絶!・・・・・ィヨコハマ昇天! ここは中華街か?
頭の中でクレイジーケンバンドの名曲『横顔』が勝手に流れ始めたぞ。あれ?どこかで見たような横顔の女性がカウンターに。話しかけるのは野暮ってもんだ。そろそろ〆に行こう。
ドーン!昭和カレーライス!これぞシンプルの極み。これぞ日本人のソウルフード。
ウスターソース、イカリソースどっちも好き!どっちもウスター!男なら両方がけで食ってくれ。
ジョーさん、まいりました。完全に昭和カレー気絶……。ウスター昇天!めちゃくちゃ普通なのに、なぜにこんなにウマウマなんだ。
もう撮影を忘れてトークが止まらないぞ。ハマの話がディープすぎて原稿にかけない。「赤星」を探してたどり着いた酒場は異空間でご機嫌なスポットだった。
「市民酒場 ジョー」では7/28にプロのダンサーによるサンバイベントがあった。地腹でお店にダンサーを呼んだ豪快な伝説を持つジョーさんらしい。
ジョーさんに会えて良かった。自由なスタイルなのでこの市民酒場は不定休だ。それがジョーさんの生き方なのだ。何日も休みが続くときもある。必ず事前に連絡してから訪れて欲しい。情報源はお店の公式インスタをチェックするしかない。そしてリンちゃんも、その日の気分で手伝いにくるのでいればラッキーってこと。なんか無理しないで生きるって一番贅沢なことかもしれない。ジョーさん、また必ず飲みに来ます。
ラコステのポロシャツ。これは古着屋で見つけたフランス製のヴィンテージ。昨年まではサイズ2を着ていたが、今年はワンサイズアップのサイズ3で、ややゆるく着ている。ビンテージも現行品もどちらも一生の定番と呼べる名作だ。
Text:Eiji Katano
Photo:Shinpei Suzuki