寒すぎる今年の冬はパタゴニアが心まで温めてくれる。今では一般的になったフリースをシンチラという名前で誕生させたアウトドアブランドだ。完成されたデザインと機能性は、高価格でも20年以上愛用できるので正に一生の相棒でもある。
そんな1990年前半のオールドパタゴニアにはリーバイス606とレッドウィングのベックマンがしっくりくる。お気に入りの冬コーデで日本一のシャケ定食を探しに北海道ではなく代田橋に向かった。
甲州街道の路地裏を入るとリトル沖縄タウンがある。沖縄出身の人が移住し、いつの間にか形成されたらしい。ディープな「めんそーれ大都市場」の中に果たして日本一のシャケ定食があるのか?
気分がソーキソバになりながらも横丁を進む。
おおっ!看板は「おきなわ」だが、昭和な食堂らしき店構えが?しかし違和感がハンパない。
「しゃけ小島」は、ここだけ北海道にワープしたかのような素敵な光を放っている。
まるでセットのような店内はさっきまで沖縄気分だった事が嘘のようなド昭和空間だ。
グッとくるフォルムと色で昭和萌えが止まらない。
上しゃけ定食と決めているがルービーに合いそうなつまみばかりで迷い始めてきた。
おっ!鮭の皮揚げ?鮭で一番ウマいところは皮だと思っている俺には突き刺さる一品。
軽くルービーを飲みながら定食を味わうのがマイスタイル。まずは上しゃけ定食を注文して、先に小鉢だけで飲むことに。しゃけとご飯とお味噌汁は〆として最後にいただくってわけ。こんなわがままにも快く対応してくれるなんて嬉しすぎるぞ。
「赤星」でいただく小鉢が予想を遥かに超えるクオリティ。これは定食だけでなく一品料理も美味いに違いない。
カセットの入っていないラジカセから俺にだけは昭和のメロディが聞こえてくる。
他の一品が気になり、鮭の皮揚げを注文。こいつと「赤星」って間違いなくヤバいっしょ。
しゃけ気絶……皮昇天!強烈にウマい!パリパリで今までの鮭の概念がひっくり返る。まだまだご飯に行くわけにはいかない。
さらに鮭フライ!俺は定食をフィニッシュできるのだろうか。
ソースをかけず、そのままタルタルだけで一口。強烈にウマい!カリカリ衣で揚げられた今まで食べたことがない鮭の衝撃が口の中で広がる。
もう鮭が止まらない。そう止めなくていい鮭バター焼!この厚みと皮を見ているだけで興奮してくる。
まじで卍固めされているようにウマすぎロック状態。鮭の身が何度も言うが今までにない衝撃の味。ご飯が我慢できなくなってきた。そろそろフィニッシュの〆に行こう。
焼きしゃけとご飯、味噌汁をお盆に追加オンして、やっと辿り着いた日本一のしゃけ定食の完成。ほろ酔いで食す定食って最&高でしょ?
ヤバい、ヤバい、ヤバい!上しゃけ気絶……定食昇天!最高の鮭に白いご飯って日本人ならやっぱこれだ!皮もウマすぎる!やっぱりシンプルに焼き鮭がキングオブ鮭料理なのだ。もうこれは宇宙一のしゃけ定食と言ってもいいだろう。
「しゃけ小島」は、ある3人の男のこんな話から始まった。死ぬ前に食べたい物は何か?やっぱり鮭の皮だろって事で、日本一のしゃけ定食を極めるプロジェクトが始動する。ちなみにこの方は4人いる共同経営者の1人でお話を伺った太田さん。
小島という店名は初期メンバーの小島さん、小林さん、松島さんの漢字からとったもの。太田さんは後に経営に加わったので店名には入っていない。
まず日本一の鮭を求め、小林さんが日本中を巡るクレイジーシャケジャーニーに旅立つ。そして最終的にたどり着いたのが北海道、釧路の食堂で食べた時鮭(ときしらず)と呼ばれる鮭だったのだ。秋ではなく春から夏にかけて獲れる貴重な鮭らしい。
ときしらずに惚れ込み現地から鮭を仕入れ、10年前に資金に合った立地で創業したのだ。元々沖縄の物産店だったお店の内装を、その釧路の食堂をイメージしてリノベーションしている。
最高の食材と調理方法はもちろんだが、やはり心からウマいと思うものに欠かせないのは、情熱なのだろう。
いつか釧路の食堂にも行ってみたいものだ。しゃけ定食の他にも昭和な定食メニューがありそうだし、高倉健さんとか田中邦衛さんみたいな時代おくれの男が「赤星」を飲んでいるに違いないと俺の妄想は止まらない。
店を出で沖縄横丁を歩いていると気になる店が。
え?あのしゃけの他に、つまみで立ち飲みできる姉妹店なのか?この続きはFORZA STYLEのアニ散歩で公開ってことでもう一杯ひっかけて行くかな。
パタゴニアの名作、ベビーレトロカーディガン。1990年前半のもので、ナチュラルにパープルのカラーリングはパタゴニアならではの配色で名作中の名作と呼ばれている。今は販売されていないので根気よく古着屋でコンディションの良いものを探すしかない。
Text:Eiji Katano
Photo:kou Maikawa