長袖のポロシャツが好きだ。イタリアの爺さんが着ていそうな野暮ったい感じがたまらない。黒のトップスに生成りのチノパン、そして足元は茶靴でハズす。
マイ・スタンダードなラコステは袖を少しだけまくり、ボタンを全て留めるとこなれて見えるのだ。
天然ラバーのソールが歩きやすいパラブーツのシャンボードはデカタグの古いものが気に入っている。そんなスタイルで江戸川橋の路地裏へ。
昭和の染み込んだ暖簾を潜ると、そこは昭和遺産酒場だ。オヤジさんの佇まいに俺の昭和センサーが強烈に反応している。手書きの品書きを見ただけでほろ酔いだ。
カウンターに並んだ中からお通しを3品選び、こいつを注ぐ。
最&高な、ぷはっ!相変わらず毎度のことだがウマすぎる至福の瞬間だ。さてと、まずはオヤジさんオススメの一品を待ちながらチビチビはじめるとするか。
大衆割烹と言うだけあって、なんとも唸る包丁さばきにうっとり。カウンターで眺めながら飲みたいが、荷物置場と化しているので無理。それはそれでいいのだ。
イワシの刺身は食べやすく軍艦巻きのようだ。一口食べてみると瞬間気絶!江戸川橋の路地裏とは思えない一瞬で漁港にワープしたかのような強烈なウマさ。
「とりあえずこれも食べて」と出された煮込み。よく見るとモツではなく鳥皮で、なんとも優しそうなルックスだ。
なんじゃこりゃ!こんな煮込み食べたことがない。プルップルの鳥皮が柔らかすぎて強烈にウマ気絶!さらに煮込みスープが出汁出まくりで、白いご飯が食べたくなってきた。いやこれに麺を入れて食べてみたい!
ふと横を見ると大きな座敷が広がっている。昔はこのスペースが別店舗でコインランドリーだったが、増築されたらしい。
目の前ではサラリーマン風のグループが盛り上がっている。そんな中でも、俺は自分のペースで飲めるひとり飲みが好きだ。
さてと、大衆割烹の串カツはどんなものか?美しいその姿を堪能し、食らいつく。
強烈にウマすぎてカツ気絶・・・・・串昇天!いたずらに衣が多くなくカリッと揚がり、ジューシー肉が俺の魂までも揺さぶる。ここまで全部美味いと、もう全ての料理を食べたいぞ。しかし俺はひとりだ。何事もやりすぎてはいけない。ほどほどの加減が大事なのだ。
そろそろ〆の2品にする。オヤジさんが厨房で炒める音に興奮してきた。
隣では娘さんが心を込めて作っている。最&高な親子が作る親子な2品とは?
オヤジさんの大衆割烹チキンライス!最初に品書きを見たときからこいつがずっと気になっていた。出汁の効いた味噌汁も丁寧な仕事をしている。
娘さんの出汁巻き卵!ふわふわっと愛情の出汁も効きまくっていそうだ。
チキンライス&出汁巻き卵でチキン気絶・・・・・親子万歳!衝撃のウマさに言葉が出ない。これが親子愛なのか?
オヤジさんの飯田幸男さんは茨城で生まれ育ち、15の夜に板前を目指し京都の割烹料理屋で修行するために家を飛びだした。皿洗いと御用聞きの試練を乗り越え料理の腕をあげ東京に戻り、ここ江戸川橋で28才にして「すみれ」を開業したのだ。ちなみに奥さんは修行時代に京都まで追いかけてきたほどの大恋愛の末に一緒になったとの事。
お店を始めるにあたり、ある酒販店さんが物件探しなどのサポートをしてくださったとのこ
ちなみにランチも営業しているので、お昼に焼き魚で気絶することもできる。サイドメニューの小鉢もあるのでルービーを我慢できるか?飲んじゃうか?それはあなた次第。
ラコステのロングスリーブポロシャツ。日本ではあまりポピュラーではないが、イタリアの広場でチェスをやりながらワインを飲んでいる爺さんが、たまらなくカッコよく着こなしている。その日の気分で袖のまくり加減を変えてさらっと着ていただきたい永遠のアニ定番だ。
Text:Eiji Katano
Photo:Shimpei Suzuki