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団長が行く File No.47

銀座「黒猫夜」私のとっておき“ガチ中華”を紹介します!

「黒猫夜 銀座店」

公開日:

今回取材に訪れたお店

黒猫夜 銀座店

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あのお店はなぜ時代を超えて愛されるの? お客さんがみんな笑顔で出てくるのはどうして? 赤星探偵団の5代目団長・宇賀なつみさんが、名店の暖簾をくぐり、左党たちを惹きつけてやまない「秘密」を探ります――。 (※撮影時以外はマスクを着用の上、感染症対策を実施しております)

■日本人の味覚に媚びない現地の味

ラーメンや餃子、チャーハンといった定番中華に加えてオムライスやカレーライスも出すような大衆的な中華料理店「町中華」が見直されるようになって久しい。

そして最近では、日本人にもおなじみの北京、広東、上海、四川の四大料理の枠にとどまらず、広大な中国各地の知る人ぞ知る名物料理を出す店が増えてきた。日本人の味覚に媚びず、中華圏の人が主に中華圏の人に向けて本場の味を提供する新勢力、いわば「ガチ中華」だ。

銀座「黒猫夜」私のとっておき“ガチ中華”を紹介します!

しかし、今から18年前の2004年、東京・赤坂に、そんな「ガチ中華」の先駆けとも言える店が、実は日本人の手によって誕生していた。「黒猫夜(クロネコヨル)」というなんとも風変わりな名前のこの店は、好奇心旺盛なグルマンたちの間で評判となって繁盛し、六本木、そして銀座にも姉妹店ができている。

我らが宇賀なつみ団長は、何を隠そう「黒猫夜 六本木店」に何十回と通っている常連。しかも、「黒猫夜」ではサッポロラガービール、通称“赤星”が飲めるときている(通常は飲み放題メニュー内での提供)。久しぶりに団長肝いりのガチな中華と赤星のマリアージュを楽しもうと、今宵は、お初の銀座店へとやってきた。

銀座「黒猫夜」私のとっておき“ガチ中華”を紹介します!

宇賀: へぇ〜、ステキな空間。六本木店もおしゃれなお店ですが、こちらもいい雰囲気ですね。銀座のど真ん中なのに、エレベーターを降りた途端、古き良き中国の街の裏路地に迷い込んだかのような錯覚に陥ります。

さあ、今日は何をいただきましょうか。もちろん、まずは赤星! それと、前菜の盛り合わせはマストでいただきます。喉を潤しながら、後の注文をじっくり考えさせてください。

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キンキンに冷えた赤星が到着。トクトクトクと、沸き立つ泡を見るだけでゴクリと喉が鳴る。

――いただきまーす!

宇賀: はい、美味しい! 赤星くん、今日もやるね。

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「黒猫夜」は中国食材の輸入業を営む田中力哉さんが開業した店だ。田中さんは大学卒業後、貿易の会社に就職し、中国食材を買い付ける仕事に取り組んだ。1990年代の中国はまだ共産主義の色が濃く、そこでビジネスを行うのは苦労の連続だった。

それでも中国各地を巡り、日本ではまだ知られていない食材を見つけ出す仕事に没頭。現地での実践で中国語を習得し、円滑にコミュニケーションできるようになると、さらに日本ではあまり知られていない地域の探索にのめり込んでいったという。

銀座「黒猫夜」私のとっておき“ガチ中華”を紹介します!

「きたきた〜。いつもこれをビールでスタートするんです」と団長が歓喜するのは、黒猫夜名物の季節の前菜盛り合わせ。

この日は、芝海老の紅麹漬けや姫サザエの大蒜醤油漬け、枝豆の老酒漬け、鰻と肝の煮凝りなど、バラエティに富んだ楽しいセットだ。

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宇賀: 季節で変わるんですよ、この盛り合わせの内容が。おつまみに最高のセットで、これだけで赤星2本はいけちゃいます(笑)。

(枝豆を口に運んで)おっ、んーー美味しい! なんとも言えない深いお味。これ、ただ老酒に漬けただけじゃないですよね?

「老酒をベースにした秘密の汁です(笑)。茹でたてを半日漬け込んでいます。その秘密の汁に漬けると、たいていのものが美味しくなるんです」(田中さん)

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宇賀: ははは。その汁、気になる〜。売ったらいいのに(笑)。黒猫夜さんって、今まで体験したことのない食材や味付けに出合えるから、美味しいうえに、楽しいの。このサクサクしたスナックみたいなのものは? とっても美味しい!

「それはトウモロコシを揚げているんですが、鹹蛋(シエンタン)というアヒルの卵の塩漬けを細かく砕いたものを衣に混ぜています」(田中さん)

宇賀: 手間かかってるなー。さすが、中国料理は、深い。そして、赤星に合う!

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■「夜中でもちゃんと食事をしたい」の声に応えて

熟考の末、赤星と一緒に味わったらいっそう美味しそうな料理を2品追加した。その1品が、黒猫夜の定番であり、団長もお気に入りである鴨の舌、つまり鴨タンの炒め物だ。

宇賀: これがまた、たまらないんですよね〜。可食部は意外と少ないんですけど、なんとも味わい深くて、牛タンのようにちゃんとタンの風味もあって。

テレビ朝日に勤めていた時に、めちゃくちゃグルメな先輩に、「いい店があるよ」って六本木店に連れてってもらったのが黒猫夜を知ったきっかけでした。その時に、この鴨タンをいただいて衝撃を受けました。美味しいし、日本にこんな店があるのかと。

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コロナ前は、六本木店は朝5時まで営業してましたよね? 私、22時から生放送の報道番組を担当していたので、仕事が終わってさあ夕飯を食べようとなると、もう日付が変わってるんですよ。

会社がある六本木には、深夜営業しているお店はいっぱいあるけど、たいていが飲み屋さんで、しっかりしたお料理をいただけるところって案外少なくて。

そんな中、黒猫夜は頼もしい存在だったなあ。そんな時間でも本格的な中国料理があって、ごはんにもいいし、飲むにもいいし。結局、お料理が美味しすぎて、お酒も進んで、朝まで飲んでるってことが多かったんですけどね。店を出たら、「あ、明るい」って(笑)。

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宇賀: ところで、“黒猫夜”っていう店名の由来はなんですか? とてもかわいくてユニークです。

「“夜猫”って言葉が中国にありまして、夜ふかしとか、宵っぱりといった意味で、夜遊びを指すスラングなんですが、それをもじって店名にしたんです。

オープン当初は、雑居ビルの中にある怪しくて意味不明な名前の店だし、出てくる料理はマニアックすぎるしと、なかなか受け入れてもらえなくて、経営的にはかなり苦戦しましたね。半年くらいはだいぶさみしい思いをしたものです。今では、いい名前だと言ってもらえることが多くなりましたけどね」

宇賀: 確かに先輩に連れて行ってもらわなかったら、自分ひとりでは入らなかったかも(笑)。でも、夜行性だったあの頃の私にはまさにうってつけのお店だったわけですね。

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■おなじみの酢豚もところ変われば品変わる

ビールのお供チョイス2品目は、四角豆の炒め物。四角豆とは熱帯アジア原産の豆で、大きな莢の断面が四角であることから、その名が付けられている。

黒猫夜では、安全で新鮮な有機中国野菜を中国から直輸入しているほか、千葉県横芝にある自社農園でさまざまな中国野菜を栽培し、店で提供している。四角豆もそのひとつだ。

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宇賀: シャクシャクといい食感。一緒に炒めてあるのは干したお魚でしょうか、これがいい塩加減でアクセントにもなっていて。

えっ!?  甘い。お団子が甘いです。これは意外。でも、塩味の四角豆と合うなあ。これは初めての美味しさ!

再びメニューに目を落とした団長は、いつになく神妙な面持ちだ。うーんうーんと唸っている。どうやら今宵のメインディッシュを決めかねているご様子。

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宇賀: 西安の羊肉料理も気になるし、湖南風ソースでいただく本日の鮮魚も捨てがたい……。何かを選ぶということは、何かを捨てるということ。人生とは、何かを選び、そして捨てることの連続ですね。

出家してしまいそうな無の境地から、「決めました!」と団長が目を輝かせて、煩悩の此岸に戻ってきた。

宇賀: やっぱり酢豚にします! もう何度もいただいているから迷ったのですが、今日はこちらの酢豚を食べずには帰れないことを、自分自身を見つめて確認しました。

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かくしてやってきたのは、大きな豚肉の塊が猛々しく屹立する迫力満点な一品、上海黒酢スブタである。

日本で一般的に酢豚というと、一口大の豚肉とニンジンやピーマンなどの野菜も入って彩豊かなものをイメージすることだろう。田中さん曰く、そのような酢豚は中国の南の方のスタイルで、北に行くと、肉の他に野菜はあって芋くらい。肉は大きな塊で揚げてからじっくり煮込み、黒酢を使ったソースをたっぷりとまとわせるのが特徴とのこと。

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テーブルで田中さんに取り分けてもらい、肉にナイフが力を入れずにスッと入ったのを見て、団長の煩悩は最高潮に達する。

宇賀: わーーっ! コレなんです。この酢豚をいただいて、酢豚ってホントに美味しい料理なんだって気づいたんです。

(大ぶりの一片をほおばって)むふ、おいひぃ。肉の旨味が閉じ込められていて、一見くどそうに見えるけど、パンチがありながら、これがサラリとした後味で、いくらでもいただける不思議な魅力。一緒に煮込まれた芋もまたなんとも味わい深くて……(以下省略)

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要約すると、とにかく強烈に旨いそうだ。

酒はいつの間にか、中国の醸造酒、黄酒(ファンジョウ)に移行している。中国の酒というと、日本では紹興酒が有名だが、紹興酒は紹興酒市で醸造される黄酒であり、黄酒の一種に過ぎない。シャンパンがスパークリングワインの一種に過ぎないのと同じだ。

ちなみに老酒は3年以上熟成させた黄酒のこと。黒猫夜では、田中さんが足で探した小さな蔵で醸される珍しい黄酒を常時20種ほどいただける。団長は少しずついろんな種類を飲める利き酒セットを見繕ってもらった。

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宇賀: 黄中皇は紹興の黄酒なんですね。あ、なじみのある紹興酒の味だけど、いつも飲んでるものよりめちゃくちゃ上品で飲みやすい!

台湾老酒はより南のお酒ってことですよね。うん、これはより飲みやすくてスイスイいけます。

このひときわ色が薄い百吉納は、えっ? 原料に牛乳が使われているんですか? あ、美味しい。乳酸っぽい風味を感じられます。

コーヒーみたいな色の即墨焦は、スモーキーで、まさにコーヒーのような香ばしさやコクがあって、これまた美味しい。穀物のヒエを焙煎して使っているんですか? コレ、酢豚と抜群に合います!

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■旨すぎ危険、香りで飲める土鍋ごはん

さあ、宴も終盤。赤星と黄酒でいい気分になってきたが、〆の注文にも抜かりはない。香港など広東省で定番の土鍋ごはん「煲仔飯(ボーチャイファン)」のお出ましだ。

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最高級タイ米を、肉団子、鹹魚(塩漬けの魚)、中国ハムなどと一緒に炊き込んだもので、たっぷりの薬味と特製の醤油ダレで、目の前で仕上げられる。

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宇賀: 今、混ぜてもらっている時の香りをつまみに、お酒を二口飲んじゃいました(笑)。

(ごはんをいただき)たまりません、なんですかこのごはんは! 危険すぎます。旨味をお米がよく吸っていて、肉団子もプリプリ。見た目とギャップがあって、あっさりした美味しさ。つまみにももってこいですね。私、これで朝まで飲めます(笑)。

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は〜〜、今日もお腹いっぱいで大満足。でも、結局お気に入りの鴨舌と酢豚を食べちゃったから、新規のメニューは四角豆と土鍋ごはんしか試せなかったなあ。私が4人ぐらいいたらいいのに……。

意味不明なことを独りごちる団長に、「実は最近、九十九里にある自社農場で食用の鳩を育てていまして、予約で召し上げっていただけます。すごく美味しいですから次回はぜひ!」と田中さん。鳩も魅力的だが、さらに問い詰めると、なんとカエル料理にも力を入れているという。

銀座「黒猫夜」私のとっておき“ガチ中華”を紹介します!

「千葉の館山で天然のウシガエルをカエル捕獲のプロ“カエルおじさん”に捕まえてもらってるんです。もともと医療機関向けの実験用に捕まえているそうですが、うちではそれをお願いして分けてもらって。

すごいんですよ、マジックハンドみたいな道具で生捕りするから、鮮度が違う。カエル料理って揚げるところが多いですが、うちではその鮮度を生かして蒸し料理にしています。これがめちゃくちゃ美味しくて、ファンが急増中で……」

宇賀: なんですか、カエルおじさんって(笑)。おもしろ過ぎます! じゃ、またすぐにおじゃましないといけませんね。鳩にカエルかあ。未知のメニューが多すぎて、再訪の楽しみが尽きません。

銀座「黒猫夜」私のとっておき“ガチ中華”を紹介します!

――ごちそうさまでした!

(2022年9月9日取材)

撮影:峯 竜也
構成:渡辺 高
ヘア&メイク:ATELIER KAUNALOA
スタイリング:近藤和貴子
衣装協力:ランバン オン ブルー/レリアン(ブラウス¥18,700スカート¥24,200)
ココシュニック オンキッチュ/ココシュニック(イヤカフ¥20,900)
ココシュニック(リング¥13,200)

 

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