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団長が行く File No.44

練馬「Vin sereno」懐かしの地元で発見、新潟食材ビストロ

「Vin sereno(ヴァン セレーノ)」

公開日:

今回取材に訪れたお店

Vin sereno(ヴァン セレーノ)

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あのお店はなぜ時代を超えて愛されるの? お客さんがみんな笑顔で出てくるのはどうして? 赤星探偵団の5代目団長・宇賀なつみさんが、名店の暖簾をくぐり、左党たちを惹きつけてやまない「秘密」を探ります――。 (※撮影時以外はマスクを着用の上、感染症対策を実施しております)

■わたくし、生まれも育ちも練馬区大泉

サッポロラガービール、通称“赤星”を求めて、宇賀なつみ団長が颯爽と降り立ったのは練馬駅。今日はいつにも増してリラックスムードとお見受けする。

それもそのはず、練馬区は宇賀団長の地元。宇賀団長は生まれも育ちも練馬駅からちょっと先の大泉学園駅で、大泉南小学校、大泉第二中学校、大泉高校で多感な青春時代を送ったという生粋の練馬人。区役所や文化施設が集まるこの練馬駅界隈は、練馬区のメトロポリス。練馬オブ練馬だ。

練馬「Vin sereno」懐かしの地元で発見、新潟食材ビストロ

宇賀: 練文(練馬文化センター)は合唱コンクールや吹奏楽部の発表とかでよくきたし、二十歳になって初めて期日前投票したのは練馬区役所だったし、この辺はとってもなじみ深い場所です。とはいえ、練馬でお酒を飲もうという機会はこの歳になるまでなかったから、今日はなんだか新鮮!

訪れたのは、練馬駅からすぐの路地にある「Vin sereno(ヴァン セレーノ)」。ヴァンはフランス語で「ワイン」、セレーノはイタリア語で「晴れ晴れとした」といった意味で、このふたつの言葉を組み合わせた店名には、フレンチ&イタリアンの美味しい創作料理とお酒をカジュアルに楽しんでほしいという想いが込められている。

練馬「Vin sereno」懐かしの地元で発見、新潟食材ビストロ

口開けはもちろん赤星。蒸し暑い外を歩いてきたあとの喉を、キンキンに冷えた赤星で潤そう。

――いただきまーす!

練馬「Vin sereno」懐かしの地元で発見、新潟食材ビストロ

宇賀: んっ、おいしいっ! まだ陽が高いうちからやる一杯はまた格別ですね。

おなかはペコペコ。さてさて、何をいただこうかしら……。

練馬「Vin sereno」懐かしの地元で発見、新潟食材ビストロ

■フレンチとイタリアンをいいとこ取り

こちら「ヴァン セレーノ」は12年前にオープンした、いまやディナーは予約必須の人気店。店主の五十嵐幸太郎さんは新潟県六日町の出身で、専門学校でスポーツ栄養学を学んだあと、井荻駅の南欧料理店で8年間修業した。その間、師事するシェフが3人交代し、それぞれ料理のスタイルがまったく異なっていたことから、幅広い知識と技術を身につけることができた。

そろそろ新天地でさらに経験を積みたいと考えていたタイミングで、「ヴァン セレーノ」の立ち上げに誘われて移籍。それまで培った技術を活かして、旬の素材を使った創作系フレンチ&イタリアンの店をつくり上げた。4年前に同店を買い取って独立してからは、さらにメニューは自由奔放に。ありそうでない、魅惑的な品書きが並ぶようになった。

練馬「Vin sereno」懐かしの地元で発見、新潟食材ビストロ

宇賀: カツオのタタキと焼きナス、もち豚と牛モツの白煮込み、アナゴのラタトゥイユ風エスカベッシュ……(ブツブツブツ)うーん、どれも字面からおいしそうで迷う〜(笑)。

おお、ポテサラがありますよ。まずはこちらをつまみながら考えましょう。

練馬「Vin sereno」懐かしの地元で発見、新潟食材ビストロ

やってきたのは、人気の一品「スモークサバのポテトサラダ」。燻煙したサバをたっぷりと練り込み、マスタードと黒コショウを利かせたオトナのポテサラだ。

宇賀: わ、これ、おいしい! ポテトはサッパリとしていて、サバは深〜いお味。そのバランスが絶妙で。スモークの香りもいいし、赤星にバッチリ合います。

そして、このパンもおいしいの。バゲットはポテサラと一緒にいただくと最高だし、フォカッチャはこれだけで赤星2本はいけそうなくらいずっとつまみになるパンですよ。

練馬「Vin sereno」懐かしの地元で発見、新潟食材ビストロ

この日のフォカッチャはドライトマトと新玉ねぎがたっぷり入ったもの。パンやケーキも毎日店で焼いているという。できる限り手作りでおいしいものを届けたいという気概が伝わってくる。

続いて予想外の出立ちで登場したのは、前菜にと頼んだ「ピュアホワイトのムースとトマトコンソメのジュレのカクテル仕立て」。真っ白でフルーツのように甘いとうもろこし、ピュアホワイトを使った季節のメニューである。

宇賀: 綺麗! デザートにしか見えない。上にのっているのはブルーベリーかと思いきや、キャビアです(笑)。

練馬「Vin sereno」懐かしの地元で発見、新潟食材ビストロ

どれどれ……おお、ムースのとうもろこし感がすんごい! いい甘みで、とうもろこしの舌触りもいい具合に残ってる。そしてジュレのトマトの香りと酸味が爽やかなこと。一緒にいただくと、なんとも奥行きのある味わいでクセになりそう。

これ、美味しすぎます。今日はのっけから調子がいいぞ。

 

■新潟食材を使って個性的な一品に

「ヴァン セレーノ」では、五十嵐さんの出身地である新潟の食材を積極的に使っていて、それが魅力的な個性になっている。雪下にんじん、春の山菜、夏野菜、南魚沼産もち豚、妻有ポーク、ブランドいちご・越後姫やブランド洋梨・ルレクチェなどなど、一年を通じて新潟から直送される新鮮な食材を味わうことができる。

練馬「Vin sereno」懐かしの地元で発見、新潟食材ビストロ

五十嵐さんの中学の先輩が育てる「八色しいたけ」もその一つ。南魚沼産米の糠を使って菌床栽培され、“厚いにもほどがある”のキャッチフレーズ知られるブランドしいたけである。

調理する前の状態を見せてもらうと、なるほど、デカい! 生では立派な見た目でも、火を入れるとシューッと縮んでしまう残念な品種も少なくないが、八色は心配ご無用。じっくり焼いても肉厚なままだという。

練馬「Vin sereno」懐かしの地元で発見、新潟食材ビストロ

宇賀団長は日頃から「味も香りも食感もいいのに、ちょっと安すぎやしませんか?」としいたけの地位の低さを訴えるしいたけリブ活動家。それは見逃せないと、八色しいたけをグリルでいただくことにした。

練馬「Vin sereno」懐かしの地元で発見、新潟食材ビストロ

宇賀: これはもう、しいたけのステーキですね! (ひと口ほおばって)うん、うん、きめが細かくていい歯応え。まるで蒸したアワビのよう。風味が上品で、この桜海老と大葉のソースがしいたけの持ち味を引き立ててくれています。

「しいたけって実力の割に確かに地位が低いですね(笑)。でも、しいたけが嫌いな人って案外多くて、実は僕も苦手なほうで(笑)。

でも、この八色しいたけは特別な菌床栽培をしているせいですかね、原木栽培のものほど味が強すぎなくて、食べやすい。僕もこれなら食べられる。というか、おいしいと思います。先輩に気をつかってる訳ではありませんよ」と五十嵐さんは笑う。

練馬「Vin sereno」懐かしの地元で発見、新潟食材ビストロ

ワインはイタリアやフランスの自然派のものも多く取り揃えているという。搾ったあとのブドウの果皮や種に水を加えて再発酵させて造る、イタリアではプンタネーロと呼ばれる低アルコール飲料をいただくことにした。レモンのような爽やかな酸味が鮮烈な辛口で、アルコール度数5%だから昼からでも飲みやすい。

宇賀: これは、いい! 今日みたいに湿気があって暑い日の明るいうちからゴクゴク飲むのにぴったり。

練馬「Vin sereno」懐かしの地元で発見、新潟食材ビストロ

私、料理に合わせて、赤星とワイン、赤星と日本酒と、同時にいただくのが好きなんです。欲張りすぎかしら?

 

■湧き起こるノスタルジー、あふれる練馬愛

赤星とワインの二刀流でエンジン全開の宇賀団長は、メインの肉料理に「仔羊のポルペッティ4種豆の煮込み」をチョイスした。

練馬「Vin sereno」懐かしの地元で発見、新潟食材ビストロ

ポルペッティとはイタリアの肉団子のこと。豆と一緒にトマトベースで煮込まれ、これでもかとたっぷりのコリアンダー(パクチー)、そしてハリッサ(唐辛子ベースの調味料)が添えられた一品は、中東や北アフリカも連想させるような無国籍料理に仕上がっている。

練馬「Vin sereno」懐かしの地元で発見、新潟食材ビストロ

宇賀: これは、おいしいよ、ホント。ラムの独特の味わいとパクチーのパンチ。ハリッサで味変までできて、赤星が進みすぎますね。

こちらは本当に、いろんな表情のお料理がいただけるから、超楽しい!

モリモリ食べて、グビグビと飲みながら、話題はいつしか「練馬愛」に。

練馬「Vin sereno」懐かしの地元で発見、新潟食材ビストロ

宇賀: 私は練馬をよく「埼玉にいちばん近い東京23区」と説明しますね。埼玉への玄関口なんです。板橋区もそんな立地ですが、もともと板橋区が広すぎて、区民が区役所へ行くには遠すぎるという理由で、板橋区から分離させたのが練馬区と聞いています。

23区の中でいちばん新しいんですよ。つまり田舎だったんですよね。今でも農地の面積は23区でトップ。うちの近所には牧場もあって、今だに23区唯一の牧場のはずですよ。23区なのに信じられないと言われますが、それが当たり前の風景だったので、大人になるまで東京にはもっと牧場があると思っていました(笑)。

家の近くには東映の撮影所もあって、きっと特撮ヒーローとして出演しているんだろうなという若手の俳優がよく街を歩いていました。田舎なんだけど、すらりとした超イケメンをやたらと見かけるという、なんとも不思議な街です。

練馬「Vin sereno」懐かしの地元で発見、新潟食材ビストロ

宇賀団長によると、練馬区出身者同士でしばしば話題にあがるのが「ネットボール」だとか。練馬区の小学校では盛んに行われているスポーツなのだが、なぜか区外では一切知られておらず、大人になって練馬区だけの常識と気付かされてみな驚愕するという。

「ネットボール」は、バレーボールのコートを使い、小学生でもバレーボールをもっと手軽に楽しめるようにと考案された練馬区発祥の球技。レシーブやトス、アタックの代わりに、両手でボールをキャッチし、投げることができる。

実は、世界的には同名のバスケットボールに似たメジャーなスポーツが存在する。おそらくそれが理由だろうが、近年は「キャッチバレー」と呼ばれるようになった。

練馬「Vin sereno」懐かしの地元で発見、新潟食材ビストロ

練馬区のお隣、板橋区出身というスタッフの松田睦美さんに聞いてみても「ネットボール」は初耳だという。極端なローカリズムに、ジェネレーションギャップまで加わってしまったから、なおさら理解されにくいかもしれませんよ、団長。

宇賀: ネットボールの頂点を決める大会、ま、甲子園みたいなものなんですけど、それは練馬区立光が丘体育館で行われるんですよ(笑)。その時点で、「あれ変だな」と疑問に思わなくちゃいけないんですけどね、練馬区の小学生は。

練馬「Vin sereno」懐かしの地元で発見、新潟食材ビストロ

■実は仲良し!? 練馬と新潟のいい関係

五十嵐さんは、練馬区には新潟出身の人が多い気がすると話す。

「練馬って関越自動車道の終点で、新潟方面の人にとっては東京の玄関口でもあるから、自然と親近感を抱くんじゃないですかね」

宇賀: ああ、それはあるかも! うちもスキーといえば、練馬インターから湯沢へ行くのがお決まりで、新潟と心理的距離は確かに近かったですね。いいことを聞きました。練馬区メモに加えておきましょう。

練馬「Vin sereno」懐かしの地元で発見、新潟食材ビストロ

そろそろパスタで〆ることに。選んだのは、これまたオリジナリティあふれる「桜海老と生海苔とルッコラのパスタ」。桜海老の繊細な旨味と香ばしさ、磯の香りが口の中でふわりと広がる一品だ。

ちなみに団長は、乾麺ではなく生パスタをチョイスした。

練馬「Vin sereno」懐かしの地元で発見、新潟食材ビストロ

宇賀: 五十嵐さんのお料理は、素材の組み合わせがわざとひねってあるようで、食べてみると全体的にしっかり調和していて、あ、だからこの素材とこの素材を合わせているのか、と納得のおいしさ。全部のメニューを味わってみたくなります。

ところで、赤星を置いているのはなぜですか?

練馬「Vin sereno」懐かしの地元で発見、新潟食材ビストロ

「味、ですね。料理に寄り添ってくれる赤星の味わいが好きで。生ビールはサッポロ黒ラベル派でして、結局サッポロのビールが好きなんですよね。やっぱり料理と一緒なら、断然おいしいと思うから。

私の実家は新潟で居酒屋をやっているのですが、そこで扱っているのも昔からずっとサッポロのビールです。知っていますか、サッポロビールの設立者と初代醸造技師は新潟県出身なんですよ。そのせいか、新潟にはサッポロのファンが多いような気がします」

練馬「Vin sereno」懐かしの地元で発見、新潟食材ビストロ

宇賀: へ〜、恥ずかしながらそれは知りませんでした! ありがとうございます。団長の赤星メモに加えておきます(笑)。

今日はありがとうございました。ぜんぶ、本当に美味しかったです。また必ず寄らせていただきますね。次は、母を連れて飲みにきたいな。

練馬「Vin sereno」懐かしの地元で発見、新潟食材ビストロ

――ごちそうさまでした!

(2022年6月3日取材)

撮影:峯 竜也
構成:渡辺 高
ヘア&メイク:ATELIER KAUNALOA
スタイリング:近藤和貴子
衣装協力:ルーニィ(トップス¥13,200ワンピース¥25,300)
スタージュエリー/スタージュエリー銀座店(イヤカフ右¥27,500イヤカフ左¥27,500リング右¥46,200リング左¥93,500ブレスレット¥36,300)
HIMIKO(サンダル¥19,800)

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