冬の散歩には、ネイビーのダッフルコートがしっくりくる。それも、今の気分はややゆったりめのシルエット。心まで温めてくれるブランドは、グローバーオールだ。細めのブラックデニムにニューバランスの990v4を履けば、どこまでも散歩できちまう。そんなスタイルで飲兵衛の聖地、立石へ向かった。
まずは昭和遺産級の商店街からブラブラと。
立石ハシゴ酒の一軒目としてお馴染みの名店「宇ち多゛」に寄りたいとこだが、今日俺が目指すのはこの先だ。軽く挨拶だけ済まし、宇ち入りせずに商店街を進む。
こんなところに酒場があるのかと思いながらひたすら住宅街を歩く。
マジか?突然裏路地にうどん屋らしき店が!
おおっ!これこれ、この方が店主に違いない。「うどんは持ち帰らず食べて行きます」と心で答える。その前に軽くルービーでつまみたいしね。
「四ツ木製麺所」はうどん屋なのに平日の夜と土日祝日の終日は、絶品つまみで酒が飲めるのだ。ちなみに平日の昼はうどんのトッピングをつまみに飲むことができる。
どれも魅力的なつまみばかりじゃないか。こりゃあ迷っちまうぜ。
イラストにそっくりな店主の守田さんにおすすめを聞いてみると、12月という事もあり、連日宴会つづきで今出せるつまみがほとんどないとのこと。基本的に取材は断っている事もあり、かなりアウェーな空気が漂う。
大将(守田さん)に「なんとか今できるつまみをください!」とお願いして、いつものこいつを流し込む。クゥーっと美味い!
「普段は魚介など食材が揃っているけど今日はこれしかできないよ。」と言いながら、酒肴の盛り合わせを出してくれた。最初怖かったけどめちゃ優しい大将!うどん屋とは思えないクオリティに衝撃を受ける。鳥のささ身は高級焼き鳥のレベルだ。アンチョビの入ったオリーブオイルにつける鮮度抜群の野菜もマグロの山かけも美味すぎる。
そしてフライド大根!フライドポテトのようだが大根なのだ。揚がりっぷりも、めちゃ美しい。
強烈に美味すぎる!カリッとした後におでんみたいに味の染み込んだ大根が優しいなあ〜。揚げ物なのにヘルシーってのもいい。なんとうどんのかえしに大根を漬け込んでいるとのこと。アウェーな空気が徐々に変わり、大将との会話も弾んできたぞ。そろそろ〆のうどんかな。
美しすぎる!しじみうどん。出汁の色と麺のツヤツヤ感で、これは気絶級に間違いないと確信。
強烈に美味すぎる。完全にうどん気絶・・・・・・しじみ昇天!柔らかいのに絶妙にコシのある麺は、東京とは思えないうどんのクオリティだ。
出汁はしじみエキスが炸裂していて飲んだ後に最高すぎる。東京で一滴も残さず完食したうどんは久しぶりだ。マジで美味すぎる。大将が熊本出身と聞き、納得。
取材させていただいた感謝の気持ちを込め大将に注ぐ。
乾杯!大将とも少し打ち解けたとこで、色々と話を伺ってみることに。そもそも立石なのになんで四ツ木なのか?製麺所なのになんで酒とツマミが充実しているのか?元々は四ツ木で麺だけを販売していた製麺所だったのだ。そこに立石の名酒場「宇ち多゛」の常連客が麺を買いに行き、やがてうどんの美味さが立石に広まった。そんな出会いから常連客の応援と熱いリクエストから4年前に四ツ木から立石に移転して、イートインできて酒も飲めるうどん屋に業態を進化させたのだ。四ツ木から始まったこともあり店名は変えていない。
このイラストも常連客が酔いながら書いてくれたもので今ではお店のシンボルとなっている。
常連客が作詞作曲したオリジナルの四ツ木製麺所ソングもある。
「宇ち多゛」の常連客をはじめ、多くの立石の人達に応援され今の店がある。名店の常連客が店を紹介してさらに人が集まってくるのだ。人との出会いと縁と感謝を大切にする事を、大将は改めて教えてくれた。初めて会った俺を認めてくれた大将は、最初怖かったけどめちゃくちゃハートのある大先輩だった。やはり何事も人ありきということ。さてと、ここは立石って事だし、もう一杯だけ軽くハシゴ酒散歩してみるかな。
グローバーオールの中で最もエレガントなキングストンというモデル。ダッフルコートのオリジナルと呼ばれる英国の老舗でヘリンボーンの生地が柔らかく、かなり暖かい。ゆったり目のサイズ感で着てこそ大人の雰囲気が出るものだ。
Text:Eiji Katano
Photo:Kou Maizawa