世代間ギャップも一瞬で埋めてしまう、赤星にはそんな不思議な力がある。では昭和オヤジとギャルがグラスを重ね合わせたら、どんな話題で盛り上がるのか? 互いの世代の文化や考え方、お酒の楽しみ方…お酒をこよなく愛する玉袋筋太郎さんと、トレンドに敏感な『ViVi』ゆかりのタレントが、世代のギャップを超えて酒場で交流します。
阿佐ヶ谷の夜、赤星が「うまい魚」を連れてきた
南阿佐ヶ谷の駅から少し歩いた路地裏。
赤ちょうちんの灯りに吸い寄せられるように、人が集まる一軒の居酒屋がある。
肩肘張らない大衆的な空気で、世代を問わず人気の王道メニューから、東京ではなかなかお目にかかれない珍味まで揃う『つきのや』が今宵の語りの場。
酒場文化を知り尽くした玉袋筋太郎さんと、プロダンサーであり、『午前0時のプリンセス』としても活躍するジェシカさん。世代も価値観も違う2人が、沢山のつまみが並ぶテーブルを囲い、赤星で乾杯。
赤い星がまたひとつ、街と人をつなぐ。
玉袋 とりあえず、赤星いっときましょうか!
ジェシカ 乾杯〜!
玉袋 ここの店はね、まさに“呑べえ”のファミレスなのよ。メニューの守備範囲が広すぎてびっくりすると思うよ。
ジェシカ 全部美味しそうです! メニューを見てるだけで楽しい。ナポリタンもハンバーグも何でもあるー♡
玉袋 どんな呑べえと来ても、どんな気分の日でもちゃんと順応するんだよ、この『つきのや』さんは。
壁一面にずらっと並ぶメニュー。あん肝ポン酢やイカ焼きなどの居酒屋らしいつまみ系から、ナポリタンなどあらゆる年齢層に人気の一品まで。
玉袋さんの大好物のくさや! 焼いて提供してくれるお店は都内ではなかなかないのだそう。くさや 1枚1400円(半身 750円)
テーブルに並んだ一皿の中、特にこの日の主役は「くさや」だった。
ジェシカ これはなんというか……ど、独特のニオイですね。正直、食べるのドキドキします。
玉袋 「くさや」の香りは、“くさい”んじゃなくて、“かぐわしい”んだよ。
ジェシカ (もぐもぐ)ぎゃ! うっ……!! ん……? あれ? ニオイと美味しいがどっちもいる。ニオイが鼻から抜けて、口の中はめっちゃ美味しい!
玉袋 くぁ〜! ビールもくさやも最高だな! “かぐわしい”と“美味い”が交互に来るだろ? それがいいんだよ。
食べやすいよう身をほぐして提供してくれる。
「くさや」は言わずと知れた伝統的な発酵食品。主な産地は、新島や八丈島、伊豆大島の伊豆諸島。江戸時代から受け継がれてきた“くさや汁”に魚を漬け込んで作られる。特徴は何と言っても強烈な香り。ビタミンやアミノ酸が含まれていて、昔は薬代わりに使われていたという。
玉袋 俺は、くさやを人との付き合いの指針にもしてるのよ。「くせー、くせー」って言って食べない奴と、「食べてみたら美味しかった」って奴がいるわけよ。ただ「くせー」ってだけで終わらされると、なーんか物足りないなって思っちゃうんだよね。俺なんか、くさや液の芳香剤を発売してくんねえかな、ってくらい思ってるよ。
ジェシカ えー(笑)。美味しいがなくてニオイだけだったら、さすがに遠慮しときますわ(笑)。
玉袋 くさやは発酵食品で、アジとかトビウオとかを“くさや液”っていうのに漬けるのよ。何百年も継ぎ足して使ってる液で、それを毎日かき回して使うの。なかなか東京で、くさやを焼いてくれるお店がなくてさ。でも『つきのや』さんでは焼いてくれるんだよ。
ジェシカ 私も初めての経験でした! 話題も食べ物も、玉ちゃんと飲んでると同年代の友達との時間と全然違って本当にギャップしか感じません。貴重な時間をありがとうございます♡
食わず嫌いせず、さまざまな食文化に触れることの意味や時間が人生の味に変わるということを語る玉袋さん。赤星とともに、この日もゆっくりと熟したトークへ。
休日の過ごし方、共通の“楽しみ方”の流儀とは?
脂の旨味がたまらない! くじらベーコン 1250円
ジェシカ 玉ちゃんって、休日は何してるんですか?
玉袋 ウォーキング。10キロくらい歩くよ。2時間。夜飲むために、運動して整えてる。
ジェシカ えぇ! そうなんですか。すごい!
玉袋 体重は朝昼晩測ってるし、ちょっとでも体重が増えたら、歩く量を増やす。飲み歩きの仕事が多いからこそ、自分でバランスを取るようにはしてるかな。体重は20年くらいずっと同じ。
ジェシカ マジですか! なんか、思いの外……と言ったら失礼ですが、めちゃくちゃちゃんとしてるんですね(笑)。実は、私も毎日1時間半くらい歩いてるんです。ワンちゃんと一緒に。
イカのワタ入りの名物。もみイカ 680円
玉袋 歩くってのは立派な運動だよな。俺は仕事の日でも一駅前で降りて歩くようにしてるよ。
ジェシカ すごーい! 私は一日のオフだったらネイル行ったり、ヘアカラーしに行ったり、予定をパンパンに詰め込みます。ずっと家にいるってことはないかな。そう考えると、私たち、休日はある意味、美容デーですね(笑)。
玉袋 あははは! 美容デーね。俺はその後、酒飲んで泥になるけどな。
ジェシカ ねえ(笑)。台無しにしないでください。
玉袋 でも、歩いてるだけマシでしょ? ちゃんと“行って来い”にしてるんだよ。
ジェシカ それはそうですね! 私も玉ちゃんと一緒で、食べるのも飲むのも大好きなんで、それを我慢するんじゃなくて、我慢しなくていいように、ちゃんと動くようにしてます。楽しみを減らすのってストレスだから、楽しむために頑張る!
玉袋 そうそう。我慢じゃなく調整!
ブームよりもライフにしろ
驚きのボリューム! ニンニクが効いた濃い目の味付けにビールが進む。ホルモンやさい炒め 500円
くさやにくじらベーコンなどの珍味、ホルモンやさい炒めなどの王道人気メニューをつまみつつ、話題は美容から流行へ。
ジェシカ 玉ちゃんが私くらいの年齢の時に流行ってたことってなんですか?
玉袋 俺はひねくれてるから、流行っていうのには後ろ向いちゃうタイプなんだよな。流行ってるからやる、とかそういうのがあんまり好きじゃないんだ。だからずっと、「ブームじゃなくて、ライフにしろ」って言ってるんだよ。
ジェシカ なんですかそれ。かっこいいー!
玉袋 ま、最近Switch2は買ったけどな。ドンキーコングが好きで。
ジェシカ いきなり小学生みたいなこと言ってる。かわいい(笑)。私は、あえてブームに乗ることもあって。3、4年前からTikTokやってるんですが、皆さんに自分知ってもらうために「よし、やってみよう!」と思って、知らない世界だったんですが始めてみたんです。
玉袋 発信するっていうのは大したもんだよ。
ジェシカ ちなみに、最近インスタでは「10年前の自分」を投稿するのが流行ってましたよ。玉ちゃんは、10年前って何してました?
玉袋 今年、俺は59だから49の頃か……。あんまり変わってないんだよな(笑)。
ジェシカ 体重も変わってないんですもんね? それ本当にすごいですよ。私の10年前は二十歳の頃。以前もお話しした、雑貨屋さんでバイトしながらダンスを頑張っていた時代です。
玉袋 すごいよな、10年前に頑張ってたことがちゃんと生業になってるっつーのは。
ジェシカ 下積みでお金もなくて本当に苦労はしましたが、その時はめちゃめちゃ楽しかったです。
玉袋 下積み時代は、もちろん辛いことも多いけど夢に向かって楽しんでやってるんだよな。俺もバイトで一日千円しかもらえないような超貧乏時代もあったな。きつかったけど今思い返しても心から楽しかったと思うよ。日常の苦労や楽しみを積み重ねることが、人生の“旨み”になっていくんだなとつくづく感じてる。
散歩の帰り道、赤星を探しにスーパーへ
冬が旬のなまこ。コリコリとした食感が新鮮さの証拠。なまこ酢580円
玉袋 俺な、ウォーキングの帰りにスーパー寄るのが好きなんだよ。
ジェシカ スーパーですか?
玉袋 そう。なんせ10キロも歩いてるし、いくつかコースもあるからスーパーが結構あってさ。今日はどこに寄るかなって選ぶのが結構楽しくて。
ジェシカ へえ〜!
みずみずしい新じゃが。一口サイズがかわいらしく食べやすい。じゃがバター 400円
玉袋 でな、まずチェックするのがビール売り場。赤星があるかどうか。
ジェシカ まずはビールですね(笑)!
玉袋 そう。置いてる店と、置いてない店があるわけ。置いてあると、ちょっと嬉しい。ここは、“分かってるな”って思うわけ。スーパーごとに陳列のクセも違うからさ。ビールコーナーのど真ん中に赤星があると、“今日はここで正解”ってなるんだよ。
ジェシカ さすがでございます。それ楽しそうだから、私もワンちゃんとの散歩の帰りに探してみようかな。
玉袋 赤星を見つけたら、そのあとは、刺身にするか総菜を選ぶか。今日は歩いたから揚げ物いくか、それとも控えめにいくか。一人で晩酌する時間を、どう作るかが楽しい。そのためにスーパーを巡ってるようなもんだな。
ジェシカ ちゃんと運動して、ご褒美に晩酌。生活の中に赤星もあって、めちゃめちゃ人生楽しんでますね。
玉袋 特別な日じゃなくても、普通の日だって最高の時間。流行でもイベントでもないけど、“あるのが当たり前”っていうのは、きっと、赤星がずっと選ばれてきた理由でもあるんだよな。
ジェシカ めっちゃいいこと言う〜!
大人気メニュー! 香ばしく炒められた麺に甘いケチャップが絡み、箸が止まらない美味しさ。ナポリタン 650円
玉袋 そして、人生は煮込み料理でもあるんだけど、もう一つ、人生発酵食品論っていうのも掲げてる。
ジェシカ また上手いこと言って(笑)。
玉袋 今日食べたくさやもそうだけど、発酵っていうのは、時間を味方にするってこと。若さは勢い。年齢は深み。今、ジェシカは若くてそのままでももちろん素敵だけど、年を取ったらそれだけじゃ面白みがないだろ? やっぱり知れば知るほどクセになる人がいい。そういう意味も込めて、今日は是非ともジェシカに、くさやを食べてもらいつつ、赤星を飲んで欲しかったのよ。
ジェシカ まさかそんな深い意味があったとは。玉ちゃんって、まさに知れば知るほどクセになりますね〜。
玉袋 だろ?(笑)。違う素材が混ざり合って、味は完成する。人生は発酵食品みたいなもの。時を重ねれば重ねるほど、旨みは増していくのよ。クセさえも、その人だけの“魅力”になるってわけ。
ジェシカ いろんな「うまい話」と初めてを教えてくれて、玉ちゃん、ありがとうございました! また赤星で乾杯しましょう!!
阿佐ヶ谷の居酒屋で、赤星で乾杯。珍しくてクセになるつまみたちと共に、ギャルとオヤジの人生がゆっくりと発酵していく、忘れがたい一夜となった。
Photos:Ayako Nakamura
Hair&make-up:HIYORI
Styling:Rinka Shoji
Interview&text:Yumiko Ito





と赤星
と赤星


